Music of Frontier

打ち上げは、いつもの居酒屋で行った。

何だかんだと、息抜きが上手な『frontier』である。

打ち上げの後は、ルクシーと一緒にエルフリィ家に戻った。

その帰り道でのこと。

「…ねぇルクシー」

「うん?」

「俺、いつまでエルフリィ家にお世話になるんですか?」

そろそろ、また独り暮らしに戻っても良いのでは?

もう治ってるよ?摂食障害。

一応、月一でエインリー先生のところに通ってはいるけどさ。

「もう随分良くなったね~」って、にこにこしながら言われたよ?

「あ…?何だお前、そんなに俺の家は嫌か?」

「いや…そういう訳じゃないんですけど…」

エルフリィ家の居心地が悪い訳じゃないよ。

むしろ逆。居心地は良いんだけど。

「でも…いつまでもお世話になる訳には…」

俺だってほら、自立的なものをしたい。

「家を出てった方がお前は世話が焼けるから、うちにいてくれた方が良いんだよ。お前放っとくと、また素パスタ生活始めるだろ」

「うっ…。分かりました。素パスタはやめますよ」

「じゃあ次は何にするんだ?」

「…」

…次…次、か。

簡単に作れて、それでいてお腹一杯になれもの…と言えば。

「…分かった!トースト生活にします」

「…作り方は?」

えっ?

「そりゃあなた、食パンを焼いて」

「焼いて?」

「…マーガリン塗って、食べます」

「…せめてバターにしろよ…。それでも元貴族か、お前は」

マーガリン美味しいじゃん。安いし。

「しかもそれは料理とは言わん。素パスタと変わらないレベルだし」

「えぇ…じゃあ妥協して、お茶漬けとか…」

「却下。料理をしろ料理を。とにかく、そんな食生活じゃ独り暮らしは駄目だ。お前に独り暮らしなんて百年早い」

「えー…」

俺の…自立への道が…。

ルクシーによって、固く閉ざされてしまった。

「…まー別に良いですけどね。ルクシーと一緒だと、寂しくないし…」

「そうだろ?ならもう独り暮らしはやめとけ。俺も目を光らせるのが面倒臭い」

酷い。

俺は…そんなに信用がないと言うのか…。

そりゃ今まで、一杯ルクシーを心配させてきたけどさ…。

こうやってルクシーが甘やかしてくれるものだから、俺はいつまでたっても甘ちゃんのままだ。

それはそれで良いのかもしれない。

「…一緒に住めば良いんだよ。俺達は親友であると同時に、家族なんだから」

「…家族…ですか」

「そのつもりはなかったか?」

「いいえ、俺もそう思ってますよ」

家族、家族…か。良い響きだな。

今まで、家族と聞いてこんな暖かい気持ちになったのは初めてだ。