Music of Frontier

こんな格好でライブなんて、恥ずかし過ぎる…なんて。

ライブが始まる五分前までは、そう思っていたが。

そこは、俺もプロ。

ステージに立てば、自分の格好なんて忘れて、音楽になりきった。

見たか。俺のボーカル力。

とは言ったものの、ステージに立つと、案外あまり恥ずかしさは感じなかった。

というのも、ハロウィンイベントライブということで、観客席はいつもより薄暗いし。

観客達も仮面をつけたり、マントをつけて仮装している人が多くて、俺達が変な格好をしていても、あまり目立たなかった。

いや、薄暗いのは観客席だけで、ステージは普通に明るいから、充分目立ってると思うけど。

そこは気にしないことにしよう。

それにほら、今日のハロウィンライブは、他のバンドとの合同ライブで、単独ライブみたいに二時間以上ステージに立つ訳じゃない。

30分そこそこでライブは終わり、「皆さん、ハッピーハロウィン!」とテンプレートな挨拶をして、手を振りながらステージを降りた。

ほっ。

あ、でもこの衣装…確かもらえるんだよね。多分一生着ないと思うけど。

さすがに着て帰らなくて良いよね?

「は~…。楽しかったですね~」

「またこれだよ…。始まる前は、『こんな恥ずかしい格好で~』なんて、グジグジ言ってた癖に」

だって。ステージに立つと、自分がどんな格好してるのかなんて、忘れちゃわない?

多分裸でも気づかないよ。俺。

「しかし、これが終わったら、次のライブは全国ツアーだな」

と、感慨深そうなミヤノ。

…本当だ。

楽しみなような…緊張するような…やっぱり楽しみの方が強いな。

全国ライブツアーの話が来てからというもの、長い間ずっと楽しみに待ち続け、準備を重ねてきた。

これで楽しみでなく、何だと言うのだ。

ファンの皆にとっても、そうだったら良いな。

「よし、この後は仕事もないし、ライブ後恒例の、打ち上げに行くか」

「いえーい!」

「楽しみだね」

「…ベーシュさん、楽しみは良いんですが、服、着替えません…?」

大変似合ってるのは宜しいのだけど…さすがにそのゴスロリ魔女っ子ファッションで打ち上げは…。

普通にそのまま行こうとするもんだから、びっくりしたよ。