Music of Frontier

「にしても…これは俺もさすがにキツいな…」

「エル達だけ、コスプレガチ勢みたいになるよな」

「あまり奇抜な格好をして…ファンにドン引きされないかが心配だな」

ルクシー、エルーシア、ミヤノの三人も、ゴスロリ衣装と睨み合って渋い顔。

そう。ドン引きされるよこんな服着てたら。

喜ぶのは例の上司だけだよ。

しかし。

「…皆、着ないの?」

ベーシュさんだけは、何の躊躇いもなく着替えていた。

ちょ、ベーシュさんここ男四人いるから。平気でTシャツ脱がないで。

「ベーシュ…。お前勇気あるな」

「所詮舞台衣裳でしょ?少し派手なくらいが目立って良いよ」

少しどころじゃないと思うんだけどな。この派手さ。

ベーシュさんは何の躊躇いもなく、黒いゴスロリワンピースを頭からずぼっ、と被り、巨大な黒リボンがついたトンガリ帽子を頭に乗せた。

「似合う?」

「…超可愛いですけど…」

可愛いけど、でもそういう問題じゃない気がする。

ベーシュさん、あなたの度胸、俺にちょっと分けてくれないかな。2ミリグラムくらいで良いから。

「皆は着ないの?」

「…」

そんな、きょとんと首を傾げられても…。

普通、躊躇うと思うんだけどな…。

しかし、まずミヤノが意地を見せた。

「…仕方ない。これを用意されたんだから…着よう」

「ミヤノ…あなた本気ですか」

「うだうだ言ってても仕方ない。恥ずかしがるから余計恥ずかしいんだ」

ミヤノ…なんて美しいプロ根性。

「まぁ…上の偉い人がこれを着ろって言うんだから、エル達は逆らえんわな。着るか…」

次に、エルーシアが陥落。

そして。

「…だな。覚悟を決めよう。俺も着るよ」

ルクシーも、用意されたゴスロリ衣装に手を伸ばした。

皆…なんて潔いんだ。

皆がここまで勇気と度胸を見せているのだから…俺だけが逃げる訳にはいかないだろう。

「…分かりました。俺もプロの意地を見せます。ルトリア・レイヴァースのボーカル力の見せ所ですよ」

「頑張って、ルトリア。きっと似合うよ」

「ありがとうございます、ベーシュさん」

俺も、覚悟が出来たよ。

「…つーか、ゴスロリにボーカル力関係ある?」

「本人がそれで納得してるんだから、良いんじゃないか?」

ぼそぼそ、とエルーシアとルクシーが何かを話していたのは、聞こえなかったことにして。

俺は、用意されたゴスロリハロウィン衣装に袖を通した。