Music of Frontier

更に、その数日後。

エミスキーとラトベルに話を聞いたのか、今度はイーリアが、俺に手紙を送ってきた。

さすがに彼は、直接俺に会うのは躊躇われたのだろう。

手紙には、俺に対する懺悔が書き連ねてあった。

俺にあんなことをして、本当に申し訳なかったと。

どうやら彼は、エミスキーやラトベルと違って、俺が退学して以降、ずっと俺のことが頭の片隅に引っ掛かって離れなかったそうで。

密かに、俺の行方を探していたのだとか。

見つけたからって、どうする訳でもなかったのだろうが。

その為、イーリアは俺が『frontier』のボーカルであることを、あの慰労会ライブの前から知っていたそうだ。

yourtubeの動画も確認したし、Twittersも見たそうだ。

学校を追い出された俺が、ちゃんと生きていることを。

誰にも言うことは出来なかったそうだが、でも、俺のことをずっと気にしていたらしい。

成程、イーリアだけ慰労会ライブに来てなかった訳だ。

自分のしたことは決して許されない。でも謝らせて欲しい。本当に申し訳ない。

彼は手紙にそう書いていた。

勿論俺はイーリアのことも許すことは出来ない。ごめんと言われたからって、「もう良いよ」とは言えない。

けれど、恨んではいなかった。

俺は、エミスキーとラトベルに言ったのと同じことを、手紙にして送った。

彼なりに後悔しているのだと思うと、責め立てる気にはなれなかった。

しかし。

俺はもう怒ってはいなかったのだが、ルクシーは大変だった。

ルクシーは超怒っていた。特にイーリアに対しては。

「謝るなら直接謝れ。手紙にして送るなんて卑怯だ」とか何とか。

いや、でもルクシー。あなた、直接謝りに来たエミスキー達に、「どの面下げて来た」とか言ってたよね?

直接来ても手紙にしても、結局怒るんじゃん。

当の俺は全然怒ってないというのに、ルクシーが激おこなんだから、おかしな話だ。

それどころか、「そんなに怒らないでくださいよ」と宥めようとした俺が、「うるせぇ、お前に分かるか」と逆ギレされた。

理不尽。

ちなみに、エミスキー達からの謝罪はあったが、俺を直接いじめていた先輩達からの謝罪はなかった。

俺をいじめていたことを忘れているのか、覚えていたとしても、謝る必要はないと思っているのか。

それとも、どの面下げて謝れようか、と思っているのか。

何でも構わない。あの人達に関しては、謝られても気持ち悪いだけだろうからな。

それより俺が気にしているのは、むしろ…家族の方だった。