Music of Frontier

しかも、ルクシーは更に怒号を飛ばした。

「それより、俺に謝れ!俺が一体何回、お前らの立場だったらと思ったことか!あのときルトリアの傍にいたのがお前らじゃなくて俺だったら、ルトリアを助けてやれたのにって、死ぬほどお前らのことが憎かったんだからな!ルトリアだけじゃなくて俺にも謝罪しろ、この偽善者共が!」

ちょっとルクシー。あなた何言ってるの。

怒り過ぎて変な方向に行ってる。

「ちょ、落ち着いてくださいルクシー」

「うるさい!お前は黙ってろ」

何で俺まで怒られる。

理不尽だ。理不尽極まりない。

「良いか、ルトリアに申し訳ないとほんの少しでも思ってるのなら、二度とルトリアの前に出てくるな。謝って許してもらおうと思うな!甘ったれるなよ!」

「…!」

…二度と、出てくるな…か。

悪いけど…俺も、同じ気持ちだ。

「…謝りに来てくれたことは感謝します。俺を無視したこと、後悔してくれていると聞いて…少しは気持ちも楽になりました」

それは、俺も感謝している。

だけど。

「その懺悔は、俺にじゃなくて、帝国民の為に使ってください。もう誰も…俺みたいな思いをして傷つく人がいないように、俺の代わりに正義を行ってください」

在り来たりな言葉ではあるけど。

起きてしまった過去は変えられない。でも…未来なら。

これからのことなら、変えられる。

だから、今俺に報いる為に何かしたいという気持ちがあるのなら。

それは、他の誰かの為に使ってあげて欲しい。

俺は、もう幸せだから。

今は、助けてくれる人もちゃんといるから。

俺がなれなかった帝国騎士に、二人はちゃんとなれたのだから。

その職分を、しっかり全うして欲しい。

「それと…短い間でしたけど、俺の友人でいてくれて、ありがとうございました」

脆い絆だったかもしれない。

本物の友情とは呼べなかったかもしれない。

でも、俺はあのとき…確かに、二人を友人だと思っていた。

今この場にはいないが、イーリアのことも。

その事実もまた、変わらないのだ。

「…本当に、ごめん…。ルトリア」

「…ごめん…」

エミスキーも、ラトベルも、苦しそうに声を絞り出した。

…充分だ。それだけで。

それだけで…俺はもう、充分報われた。

「…約束する。もう二度と…ルトリアみたいな思いをする人がいないように…全力を尽くすよ」

「…えぇ。そうしてくださいね」

そう言って、俺は二人を送り出した。

怒りは、もうなかった。

許せたのかどうかは分からない。多分許してない。

でも、こういう形で彼らと完全に決別したことを…後悔はしていなかった。