Music of Frontier

わざわざご足労くださった帝国騎士様に向かって、「はぁ?」と言うなんてなかなか失礼だが。

こう言っては反感を買いそうだが、この二人に関しては、「はぁ?」と言ったくらいじゃ礼を失することにはならないと思う。

懐かしい顔だった。

エミスキーと、それからラトベル。

第二帝国騎士官学校時代、俺が友人…だと思っていた人達だ。

「…何でここにいるんですか?」

こいつらが二人揃ってここにいるということは…事情聴取ではないな?

「ルトリア…その…久し振り」

エミスキーが、どぎまぎしながらそう言った。

…久し振り、だと?

「そりゃまぁ久し振りですね…。慰労会ライブ以来ですか?」

「!俺達が見てること…気づいてたのか?」

「気づいてましたよ?俺が舞台に立つこと、直前まで気づかなかったのはあなた達だけです」

「…そうだな。驚いたよ、あのときは…」

やっぱり。俺が舞台に立って、初めて気がついたんだ。

俺が『frontier』のボーカルだってことに。

どんな気持ちだったんだろうな。呑気に聴きに来た慰労会ライブのステージに、まさか昔見捨てたクラスメイトが立っているのを見て。

是非とも聞いてやりところだが、生憎俺は寝不足の為に、機嫌が悪いのだ。

ついつい、声に険が混じってしまう。

「でも…何て言うか、元気そうで良かった…」

「…そちらこそ。大層立派に帝国騎士やってるようじゃないですか」

「…」

元気そうで良かった、だと?

心にもないことを言うな。

「学生時代に友人を見捨てておきながら、今や帝国民に慕われる帝国騎士様ですからね。本当に『ご立派』なものじゃないですか」

「…ルトリア…」

「何しに来たんです?まさかサインもらいに来た訳じゃないんでしょう」

ここまでつっけんどんな対応をされると思っていなかったのか。

二人共、少し傷ついたような顔をしていた。

こいつらに、こんな顔する権利があるとでも思ってるのか?