Music of Frontier

…戻ってこない?俺が?

…何で?

…え?本当に何で?

「何で戻ってこないんですか…?俺が…」

「だって…実家に戻るのかと思って」

実家…。

ミヤノは言葉を濁したが、成程、この様子では皆、もう俺が元貴族だったことを知っているんだな。

俺があの事件の被害者だってことも。

知っていながら…深く追及してこなかったことは、大変有り難かった。

「…戻りませんよ」

俺にとってマグノリア家は、戻るべき場所ではない。

俺の居場所は、もうあそこにはない。

「俺の居場所は、ここです。『frontier』です。ルクシーの隣です…。だから、俺は何処にも行きません。ちゃんと帰ってきますよ」

「ルトリア…」

「心配…かけましたね、皆さん。ごめんなさい」

皆が、そんなに心配していてくれたとは。

自分のことで頭が一杯で、気が回っていなかった。

迂闊だった。

「…全くだよ!お前、エル達に心配かけ過ぎだぞ!詫びを入れろ詫びを!」

ぐずっ、と鼻を啜って、エルーシアがそう言った。

「えっ、詫びって…。ど、土下座しましょうか?」

皆を心配させてしまったのは間違いなく俺の過ちなので、土下座で許してもらえるのなら、いくらでも土下座する。

しかし。

「ちげーよ!焼き肉行くぞ焼き肉!食べ放題!奢れ!それが詫びってもんだ!」

「あ…成程。分かりました、そんなことで良いなら…」

いくらでも奢ります。

「私、お酒飲み放題付きプレミアコースだからね。お高いけど、お詫びだから覚悟して」

そして、容赦のないベーシュさん。

「分かりました。存分に皆で俺の財布を総攻撃してください」

「おうさ!エルも、あれだからな。コースとは別料金のアイスクリームとか頼んじゃうからな!覚悟しろ!」

アイスクリームって。随分ささやかな一撃だ。

エルーシアらしい。

「良かった。じゃあ…これからも、皆で『frontier』だ。それで良いよな?」

ミヤノの目には、涙が滲んでいた。

…そんなに…そんなに心配してくれていたのか。

「えぇ…。皆で、このメンバーで…俺達は、『frontier』としてやっていくんです。この皆で…」

誰一人欠けずに。

皆で、一緒に歩んでいこう。

それが、俺が選んだ道だ。