Music of Frontier

「良かった、無事で…」

「無事って…。別に危ないところに行ってる訳じゃないんですから…」

そりゃまぁ、楽しいところではなかったけど。

むしろ、嫌なこと思い出して…ちょっと気分悪くなったけど。

「うぉぉぉ~!ルトリーヌ~!」

「ルトリア、帰ってきた。良かった」

で、この二人はどうしたの?

エルーシアは泣き出さんばかりに俺にしがみついてくるし、それに。

ベーシュさんは、ばふっ、と俺の胸に飛び込んできた。

え?え?ちょ。

「べ、ベーシュさん…?」

「…」

ぎゅうう、と抱きついてくるベーシュさん。

何これ。これどういう状況?

ベーシュさん、物凄く良い匂いがする。これシャンプーの…いやいやいや、何考えてるの俺。

「ちょ、ベーシュさん…!こんなところ見られたら、俺、お父様にぶち殺されますから…」

片手で持ち上げられて、崖からぶん投げられるよ。多分。

「うん…ごめん。でも、安心したの。ルトリアが戻ってこなかったら、私、もう一度…」

…へ?

「ルトリーヌよぉぉ!おけぇり!良かった!『frontier』存続決定!」

「はい…?ちょっと、エル…。何言ってるんですか?」

『frontier』存続決定って?それどういう意味?

俺がいない間に、一体何が?

「訳が分からないんですが…。ちょっと…説明願えますかね…?」

「大変だったんだぞ、お前がいない間…。『frontier』は解散の危機にあったんだからな?」

「は!?」

解散の危機?何で?

一体何がどうなったら、そんなことになるんだ?

「な、何でそんなことになるんですか?だ、だって俺達がいない間の損失分は、帝国騎士団が保証してくれるって…!」

そりゃ、金だけではどうにも埋められない損失だってあるだろうけども。

でも、解散を危ぶまれるほどの事態になったというのか?

「そういう意味じゃない。俺達の問題だよ。ルトリアが…その、もう戻ってこないんじゃないかと思って、皆心配してたんだ」

「…ふぇ?」

ミヤノの言葉に、俺は思わず、素で間抜けな声を出した。

半泣きのエルーシアと、必死に抱きついてきたベーシュさんを前に、俺は相当気の抜けた顔をしていたことだろう。