Music of Frontier

難しいことは、偉い大人達が勝手にやってくれよ。

何で、ルトリアを巻き込むんだ?

「なぁ、ルクシーヌ…。ルトリーヌ、帰ってくるよな?貴族に戻るので『frontier』辞めます、とか言わんよな?」

エルーシアは、泣きそうな顔で俺に聞いた。

これには、俺も虚を突かれた。

「え?は…そんなことはないだろ」

「本当に?だって貴族だぞ?」

「貴族だけど…ルトリアは元々、そんなに貴族の特権に執着するタチじゃなかったし…」

貴族であることに関して、溜め息をつくくらいだったからな。

ルトリアが…わざわざあの家に帰るとは思えないが…。

でも…絶対帰らないとは…。

「…やだ!ルトリーヌがボーカルやらない『frontier』なんて『frontier』じゃねぇ!ルトリーヌが辞めるならエルも辞める!」

ここで、エルーシアが衝撃的な発言。

「えっ…!ちょ、エル…!」

「私も辞める。『frontier』も人生も」

ベーシュは人生までやめる宣言。

ちょっと、何を言ってるんだお前達は。

「落ち着けお前達。気持ちは分かるが…」

ミヤノが二人を諌めようとしたが、しかし。

「じゃあミヤーヌは、ルトリーヌのいない『frontier』で良いのか!?」

「えっ…。それは…!」

「嫌だろ!?他の、何処の馬の肋骨とも知らねぇボーカルが入ってきて、『どうも、今日から僕がボーカルですwwでゅふ w』とか言い出したら、ぶっ飛ばしたくなるだろうが!」

「そりゃ…確かにぶっ飛ばすな」

色々突っ込みどころが多い気がするんだが…。そんな台詞言われたらルトリアでも腹立つだろ。

「…分かったよ。俺だってルトリアがいない『frontier』でバンドをやるつもりはない。あいつは…俺達にとって、かけがえのない仲間なんだから」

「ミヤノ…」

「お前にとっても、そうだろ?ルクシー」

「…当たり前だ」

今更、言われるまでもない。

俺にとっては、最初からそうだった。

ルトリアが『frontier』のボーカルを続けようが、辞めようが、貴族に戻ろうが戻るまいが、どうだって良い。

俺の隣にいてくれるのなら、それで。

それ以上に大切なことなんて何もない。

「…大丈夫。ルトリアは戻ってくるよ…きっと」

だから、そんな泣きそうな顔じゃなくてさ。

笑顔で、迎えてやってくれ。

あいつが、安心して帰ってこられるように。