Music of Frontier

「まーたあのニュースやってるよ。いい加減飽きたよなぁ」

「まぁな…。無理もないだろう、物凄いスキャンダルなんだし」

「…」

エルーシアとミヤノは、事務所のロビーに置いてあるテレビを観ながら話していた。

連日、ニュースでは俺の事件のことが報道されていた。

偉い教育評論家みたいな人が出てきては、「正義を教えるはずの学校で、このような事態が起きるのは誠に遺憾で、あってはならないことで…」みたいに、神妙な顔で話していた。

「あいつらも良いネタもらったもんだよな。当事者とは全然関係ない癖に、知ったかぶって」

「確かに…」

それは、俺も思っていた。

偉そうにコメントしてるけども、でもあなた、事件とは全然関係ないですよね?

「ルトリーヌもルクシーヌも、今頃何してんのかなー…」

「何してんだろうなー…。取り調べ受けてるんじゃないのか?」

「何でルトリーヌ達が色々聞かれなきゃならないんだよ?何も悪いことしてないじゃん。悪いのは、この、理事長とかいう奴らだろ?」

「あぁ、その通りだ。でも一応、事件の当事者だからさ…色々事情聴取されるんだろう」

…俺は、自分が世間を賑わせているあの事件の被害者だとは、ミヤノ達には一切話していない。

けれども、彼らは知っていた。

事件が報道された途端に、俺もルクシーも仕事に出てこられなくなった。

おまけに、そのせいで仕事に穴が空いたぶんは、帝国騎士団が補填してくれると言うではないか。

そういえば、思い返せば、ルトリアは最初出会った頃、精神科の病院に入院していた。

それだけ条件が揃えば、彼らも察しがつくというものだ。

あぁ、この事件の被害者、ルトリアなんだなぁ、と。

だからこそ、エルーシアもこんなに不機嫌そうにニュースを見ていた訳だ。

「ルトリーヌはなーんも悪くないんだろ?だったら早く返して欲しいぜ」

「そうだよな…。事情聴取のせいで、ルトリアも嫌なこと思い出させられてるだろうし…」

「…」

「…なぁ、ベーシュ。お前もそう思わないか?」

ミヤノが、ずっと黙っているベーシュさんに声をかけた。

しかし。

「…」

ベーシュさんは無言。

普段から、何を考えているのか表情が読みづらい人ではあるが…。

しかし、この日のベーシュさんは違った。

今日のベーシュさんは、今どんな感情を抱いているか、一目瞭然だった。

「…なぁ、ベーシュ。そんなに怒るなよ」

普段なかなか怒らない人ほど、怒ると怖いとよく言われるが。

ベーシュさんも同様である。

「ベアトリーヌがこんなに怒るのって、珍しいよな」

「…そう?」

「ベアトリーヌ火山、噴火してるじゃん」

「…うん。私、今ちょっと怒ってる」

それで「ちょっと」なのか?と二人共思ったに違いない。

それぐらい、ベーシュさんは怒っていた。

激おこベーシュさんインフェルノだった。

「だって、ルトリアもルクシーも何も悪くないんでしょ。なのに、何でこんなに毎日毎日、容疑者みたいに取り調べを受けなきゃならないの。他の人に聞けば良いじゃない。何で傷を抉るようなことをするの」

「ド正論だな」

是非とも、帝国騎士団の皆さんに聞かせてやって欲しいくらいの正論であった。