Music of Frontier

帝国騎士官学校は、あらゆる点で普通の高校とは異なっている。

けれど一応、うちの学校にも学園祭のようなイベントがあって。

その日俺は、その準備の為に会議室に駆り出されていた。

本来なら、俺達生徒がやるべき仕事ではなかった。

生徒の仕事は、それぞれのクラスの出し物の準備であって。

会議室で行われるのは、教官達による学校説明会だから、俺達には関係なかった。

それなのに、俺は説明会の会場設営の為に、会議室に連れてこられていた。

頼まれたのだ、教官に。

ちょっと準備を手伝ってくれ、と。

クラスでも孤立していて、居場所のない俺のことだから、頼んでも断るまいと踏んだのだろう。

良いように使われた訳だ。

断る気力もなかった俺は、渋々ながら体育館に連れてこられ、準備を手伝っていた。

すると。

「悪いんだが、天井の電球が切れてるんだ。新しいものに交換してくれないか」

俺の担任教官が、新しい電球を俺に差し出して、そう頼んできた。

「…」

俺は天井を見上げた。

当然ながら、天井に貼り付いている電球を交換するには、踏み台とか脚立が必要だ。

踏み台…って言っても、会場設営の為に机は撤去してしまってるし。

…用具室から、脚立を持ってこいと。

脚立のある用具室は一階。この会議室は三階だ。

…成程。教官はその作業が面倒臭いから、俺に頼んだんだな。

面倒臭いことは俺に押し付けてしまえと。

大体こんなのは、学校が雇っている用務員の仕事であって、俺のやるべきことではないはずだ。

とはいえ断ることも出来ず、俺は溜め息を漏らして、用具室にある脚立を取りに行った。

よろよろと三階まで一人で持って上がる頃には、腕も足もガクガクになっていた。

切れた電球の下に脚立を起き、開き止め金具をとめて、俺は脚立の上に乗った。

一番上まで登って、天井を見上げながら電球を交換していた、そのときだった。

「…?」

がしゃんっ、と音がしたかと思うと、俺の身体は不意に空中に浮いていた。

自分に何が起こったのか、最初は分からなかった。

周りにいた教官達が、こちらを見て目を見開くのを見て、初めて。

あ、脚立が倒れたんだ…と思った。

そして次の瞬間には、俺は派手な音を立てて、重い脚立ごと床に叩きつけられた。