Music of Frontier

すると。

「…ルトリアだ…」

騎士団長の方が、俺をじーっと見つめながらそう言った。

「え?あ…はい…」

騎士団長さん、知ってるの?俺のこと。

「…?ルトリア?」

三番隊隊長さんが、騎士団長さんに聞いた。

「知らないのか?一度ライブに呼んだじゃないか。『frontier』のボーカル、ルトリアだ」

「『frontier』って…アイドルの?」

「…えぇ…。よくご存知で…」

まさか帝国騎士団長に知られているとは。

『frontier』の知名度って、どうなってるんだ?

「あぁ、よく知っている。こう見えてもファンなんだ。俺が片想いしてる相手が『frontier』の大ファンなもので、俺も釣られてな」

「あ…そ…うですか…」

それは…ありがとうございますと言って良いのか?

『frontier』には全国に色んなファンがいると思っていたが、まさかその中に帝国騎士団長が含まれているとは。

名誉なことだと思うが…。

…もしかして、俺達が帝国騎士団の慰労会に呼ばれたのは、帝国騎士団長の発案…?

いや、まさかそんなことは…。

「出来れば今すぐサインをもらいたいくらいなんだが…」

「…サインは後にしろ。今は先にやるべきことがあるだろ」

「そうか。仕方ないな」

三番隊隊長にたしなめられ、帝国騎士団長は肩をすくめた。

後にって…。後にサイン求められても困るのだが…。

それより、俺が『frontier』のメンバーであることを知られているのなら、話は早い。

「…くれぐれも、俺の名前はメディアに知らせないでください。こんなこと、世間に知られたら…」

「あぁ、分かってる。そこは我々も徹底させてもらう。もし君の名前が報道されたら、そのときは我々を訴えてもらって構わない」

「…分かりました」

それくらいの覚悟で臨んでくれているのなら、俺も覚悟を決めよう。