Music of Frontier

「ルトリア…大丈夫か?」

思い出したくもない過去の亡霊が彷彿され、俺がまた発作でも起こしやしないかと、ルクシーは心配しているようだったが。

その心配は必要ない。

「えぇ…大丈夫ですよ」

むしろ、俺はちょっとホッとしたのだ。

なんだ、そのことか。とさえ思った。

『frontier』に何かあったのかと思った。スキャンダル的な何かが。

そっちの方がずっとダメージが大きいからな。

こんな…俺の、つまらない過去のことなんて。

どうでも良いことじゃないか。

なのに、何で皆こんなに騒いでるんだろう?

ネットニュースはこの件で大炎上だった。恐らく、テレビをつければ同じくこの件の報道で賑わっていることだろう。

当事者である俺が、一番落ち着いてるじゃないか。

すると。

「ルクシー…。それに、ルトリア君…」

「あ、ルクシーのお母さん…」

ルクシーのお母様が、困ったような顔をして、俺の部屋を訪ねてきた。

「どうかしました?」

「あのね…。帝国騎士団の方が訪ねてきてるの。その…聞きたいことがあるから来てくれって…」

「…」

…そうですか。

まぁ…そうなるよなぁ。

帝国騎士団にとって、この事件は看過出来ないだろう。

「事情聴取は任意だろう?無理に行くことは…」

ルクシーはそう言って、俺を守ろうとした。

有り難いことであるが…。

「無理ですよ、ルクシー。任意なんて建前みたいなものでしょう。ここまで事が大きくなったのなら、逃げることは出来ませんよ」

「ルトリア…!でも…」

「それに、帝国騎士団には俺の名前を出さないよう、しっかり頼んでおかなければいけませんから。この事件の被害者が『frontier』のルトリア・レイヴァースだと知られたら、ミヤノ達や『R&B』にも多大な迷惑をかけますからね」

こんなことが世間に知られたら、『frontier』はもうやっていけない。

ファンの皆にだけは、絶対知られる訳にはいかない。

「行きますよ。俺は」

「…分かった。…良いんだな?本当に」

「…えぇ、良いですよ」

知られたくはなかったが…こうなったら、もう仕方がない。

…逃げたくても、逃げられないんだな。

結局俺は、どうやっても、どう足掻いても、過去に囚われずにはいられないのだ。