…真実なんて、誰の為にもならないと思っていた。
闇に葬られた真実は、このまま他の誰にも知られることなく、朽ち果てていく。
それで良いと思っていた。
隠蔽された真実のせいで、俺は酷く傷つけられた。もう生きられない、死んだ方が良いと、何度も何度も、毎日のように思っていた。
生きていることが悔しくて堪らなかった。
未来に希望なんて何一つないと思った。
友達だと思っていた人に裏切られ、守ってくれるはずの家族からは見捨てられ。
帝国騎士としての道も閉ざされ、杖をつかなきゃ歩けない身体になった。
俺にはもう、何も残っていない。
惨めな命以外、何も持っていないと。
でも、そんなことはなかった。
真実は俺を絶望させたが、同時に希望を与えもした。
俺は何も持っていない訳じゃなかった。
こんな俺でも、必要としてくれる人がいた。
生きる屍のようになった俺を、回復する見込みも定かではない俺を、ルクシーは見捨てないでいてくれた。
彼の優しさが、あの優しい手紙が、俺を光の世界に引き戻してくれた。
それだけじゃない。ルクシーは、俺に音楽を与えてくれた。
ミヤノや、エルーシアやベーシュさんと出会わせてくれた。
音楽は、何の価値もなくなった俺に、生きる意味を教えてくれた。
辛かった過去は、永遠に変わらない。
でもその過去が、俺に今の幸せな未来をくれた。
だから俺は、許そうと思った。
許したいと思った。自分の過去を。真実を。
カンニング犯だと言われても良い。ちょっといじめられたくらいで情けない奴だと言われても良い。
貴族の家から捨てられた、惨めな人間だと思われても良い。
マグノリア家の恥さらしでも良い。びっこだと言われても、水商売と同じ仕事だと言われても良い。
俺には、親友がいる。仲間がいる。
俺を待っていてくれるファンの皆がいる。
そして何より、音楽がある。
だから、俺は幸せだ。
幸せだから、もうそれで良い。
真実なんて、もうどうでも良い。
そう思っていた。
それなのに。


