Music of Frontier

「そんなの無理だからやめろって。現実を見ろ、って一杯怒られた。お父さんの言うことも分からなくはなかったけど、私はどうしても、音楽をやりたかったの」

「…そうですね」

ベーシュさんは、俺達が勧誘するまで一人ででも活動していた。

音楽に懸ける思いは、俺なんかよりずっと強いはず。

「どうしても出ていくって言うんなら、二度と帰ってこないつもりで行け、って言われて。諦めきれなかったから、私は家を出て、あれ以来一度も連絡は取ってないの」

「…」

「お父さんは、今…私が何処で何をやってるのか、知ってるのかな。少しでも知りたいと思ってるのかな?それとも…あんな親不孝な娘なんて、もうどうでも良い、と思ってるのかな」

…ベーシュさんが、お父様が入院したことを知っても、会いに行こうとしなかった理由は、これか。

会いに行っても…「帰れ」と言われるのが怖い。

仲良し親子だっただけに…。今度会ったとき、また拒絶されてしまったら…もう今生で仲直りすることは出来ないだろう。

それが怖いから、会いに行きたくない。

そういうことだ。

…俺だって、親不孝な真似をして絶縁してる身分だから、偉そうなことは言えないけどさ。

「…きっと、仲直り出来ますよ。ベーシュさん」

「…そう思う?」

「えぇ。思います」

最初から関係が破綻していた俺と違って。

ベーシュさんのところは、仲良しだったんだから。

これまで築いてきた絆があるんだから。

俺のところより…ずっと希望があるはず。

「…分かった。ありがとう、ルトリア」

「いいえ」

仲直りする為には、まずはベーシュさんのお父様が元気でいてくれなくては。

だが、こればかりは祈るしかなかった。