Music of Frontier

俺、ちょっと危機感覚えてきたんだけど。

「お前うちの娘とどういう関係だ」と、脳天に鉄拳を炸裂されたらどうしよう。

俺なんて簡単に泣きゲロするよ。

本当についていって大丈夫なんだろうかとびくびくしていたが、今更「やっぱり帰ります」とも言えず。

ベーシュさんとは、あくまでお仕事上のお付き合いです!と強調するしかないな。

俺の身の安全の為に。

「ベーシュさんのお父様は、ベーシュさんのことを大事に思ってくださってるんですね」

「…そうかな」

「そうですよ」

親がそんな風に守ってくれるなんて、俺にとっては羨ましい。

俺にもそんな親がいたらなぁ、と思う。

けれど。

「うん…。まぁ、私には優しかったしね」

「…」

「よく遊びにも連れてってくれたよ。ご飯も作ってくれたし」

「料理上手なんですよね、ベーシュさんのお父様」

「うん」

…良いなぁ。

ルクシーのエルフリィ家は別として、普通貴族の親が料理作ったりはしないもんな。

いつだって食事は、お抱えの料理人が作ったものを食べていた。

だから、親の手料理って何だか新鮮で、羨ましい。

俺も一度で良いから、親の手料理なるものを味わってみたかった。

儚い望みではあるが。

そして…それ以上に羨ましいのは、料理作ってくれることじゃなくて。

それだけ、親と仲が良いってこと。

「…仲良しだったんですよね、ベーシュさんとお父様」

「うん」

「でも…それなら、どうして絶縁なんてことに…?」

「…んー」

ベーシュさんは、少し困ったような顔をした。

「私は音楽で身を立てるのが夢だったから…。帝都に上京して、音楽をやりたかった。でも、父はそれに反対したの」

…こればかりは。

ベーシュさんの気持ちも分かるが、お父様の気持ちも分からなくはなかった。