Music of Frontier

ベーシュさんは、少し考えてからこう答えた。

「うーん…。普通の人だと思うよ?怒ると怖いだけで」

それって普通なの?

「でも…その、暴れて土下座させたんでしょう?」

「うん。たまにそういうことはあったけど…。あとは普通の人だよ」

たまにそういうことがある人は、あまり普通だとは思えないんだが。

ファルネフレット家の普通の基準がおかしい。

「その…ベーシュさんのお父様って、暴れると…どうなるんですか?その…暴力とか…?」

「うん。鉄拳制裁があるよ」

怖っ。

「じゃあ…ベーシュさんはお父様の鉄拳制裁を受けながら育ってきたんですね…」

「?ううん。私は殴られたことないよ。一度も」

…えっ。

もしかして…ベーシュさんのお父様って…。

「じゃあ誰を鉄拳制裁してたんですか?」

「主にクラスメイトの男の子とか、近所の男の子」

男の子に何の恨みが?

「ほら、私ちょっと、人とは変わってるでしょ?」

「…まぁ…。変わってるか変わってないかと言われると…」

…だいぶ変わってると思う。

人のことは言えないが。

「だから、昔からよくクラスメイトや近所の子にからかわれてたの」

「あ、成程…それで…」

ベーシュさんの仇討ちとばかりに、お父様が頑張ったのね。

「一度、小学校低学年のとき、クラスの子にスカート捲りされたことがあってね」

あぁ…あるよねそういうの。

小学校低学年男子の悪戯あるあるだ。

女の子にしてみたら、大変迷惑な悪戯だろう。

「それを私が話したら、お父さん、超怒ってね」

「…そりゃまぁ怒りますよね」

可愛い一人娘が学校で、クラスメイトにスカート捲られたとあらば。

そりゃ誰だって怒る。

「相手の子の家に乗り込んでいって、ぶっ飛ばしてた」

「…」

「で、ヤクザかってくらい怒鳴りまくって、相手の子、泣き過ぎて泣きゲロしてた」

「…」

「あれ以来、一度もスカート捲りされたことない」

…だろうね。