Music of Frontier

「…大漁ですね、ベーシュさん…」

ベーシュさんの両腕には、先程ゲットした賞品がみっちりと抱き抱えられていた。

大きなぬいぐるみ、ゲーム機、玩具、お菓子…等々。

そりゃおじさんも泣くよ。メインの賞品、ほとんどベーシュさんにかっさらわれちゃって。

それにしても、ベーシュさんの狙撃の腕前は凄かった。

正にプロのスナイパーだったよ。

と、思っていると。

「いやぁ、良かったですね~『frontier』のトークショー!」

「あぁ。ベーシュちゃんも可愛かったしな」

「いやはや、面食いですね~ルリシヤは。俺もですけど!」

「良いからくっつくな。どさくさに紛れて勝手に腕を組むな!」

「失礼な!俺はどさくさに紛れてなんかいませんよ。堂々とルルシーと腕を組んでます!」

「威張るな!」

…あの人達、また来てる。

相変わらず、物凄いフェロモ、いや…物凄い存在感だ。

トークショー聞いてくれたんだね。ありがとう。

すると、彼らの横に。

「見てこれアイ公。すげーだろ?」

「本当だ。さすがだね。それ景品全部獲ったんじゃない?」

「おうよ!この超絶技巧スナイパーアリューシャの手にかかれば、屋台の射的なんぞ子供のお遊びよ!」

へへん、と胸を張る彼の両腕には、ベーシュさん以上の釣果が掲げられていた。

凄いな。スナイパー多くない?この会場。

「おっちゃんが土下座で『もうやめてくれ』って言ってきたから、このくらいで許してやったぜ」

「そっかぁ。凄いねぇアリューシャ。さすがだね」

「にひひひ」

…今日この会場に出店した射的屋さんは、皆不憫だな。

何だか申し訳ない。

両腕一杯に景品を運ぶ超絶技巧スナイパー(自称)さんを見て、ベーシュさんはちょっとしょんぼりしてこう言った。

「もう少し獲りたかったな…」

「いや…充分凄いですよベーシュさん。その…あの人達が、色々おかしいだけであって…」

大事なファンなんだけど。とても有り難いのだけど。

でも、何と言うか…人間離れしてる気がする。

「…ところで、ルトリアは何の屋台に行くの?金魚すくい?」

「あ、いやすくいませんけど…。りんご飴食べたいなと」

「そう。じゃありんご飴食べに…」

と、ベーシュさんが言いかけたそのとき。

携帯の着信音が鳴った。