Music of Frontier

名誉や体裁を何より大切にする学校なのだから。学校の不祥事は、何がなんでも隠蔽したいはず。

「おまけに、時期的にも悪かった。その事件が起きたのは、ルレイアの…例の女王暗殺未遂事件が起きたのとほぼ同時期らしい」

さすがに、これはアイズも言いにくそうだった。

ルレイアにとっては…思い出したくない記憶のはずだから。

けれども、ルレイアはもうそんなことはどうでも良いと思っているのか。

俺の心配をよそに、何事もなかったようにけろっとしていた。

「はぁ~ん、成程。そりゃタイミング的には最悪ですね」

「…だな」

あの事件と重なって、第二帝国騎士官学校でもそんな不祥事が起きたとなれば。

帝国騎士団の面目は丸潰れだ。

そりゃ隠そうとするのも分かる。

「…しかし、何でまたそれが今になって発覚したんです?」

確かに。それは気になる。

「それが…当時、その子を黙らせる為に、かなりの口止め料を支払ったそうでね。この度別件で不透明な支出があって、外部から監査が入ったことで、十年前…正確には八年前だけど、そのときの口止め料の支出も芋づる式に発覚したようだよ」

…成程。

つまり、およそ十年前にその怪我を負った子に対して、莫大な口止め料を秘密裏に支払い、事件の全てを闇に葬った…つもりだったが。

今回、別件で監査が入っちゃって、あれこれ調べられているうちに、十年前にめちゃくちゃ莫大な額が動いていることに気づかれたと。

で、「この支出は何だ?」と詰問され、そこから過去の事件のことがバレた…と。

「なんとも間抜けな顛末じゃないですか。いかにも生ゴミ糞野郎養成学校のやりそうなことです」

生ゴミって、お前。さっきと名前変わってるぞ。

「まぁ…詰めは甘いよな」

「仕方ないと言えば仕方ないね。そういうのは私達の十八番であって、彼らの領分じゃないからね」

そうだな。

そういう後ろ暗いことは、俺達の仕事だ。

「今のところ、まだ情報統制が敷かれて、世間にはバレていないけど…。これだけセンセーショナルな事件が公に発覚すれば、メディアが黙ってるはずがない。帝国騎士団は隠そうとするだろうけど…」

「…隠しきれるものじゃないでしょう。それに…隠すのはもうやめた方が良い」

その通りだ。

隠すから、バレたときに痛い目を見るのだ。