Music of Frontier

「…分かったよ。話すよ」

「え?話してくれるんですか?無理しなくて良いんですよ」

「俺の寝言を聞きたいだけだろ、お前。ふざけるな。真面目な話だ」

「はいはい。聞きます。ちゃんと聞きますから~。そんな激おこルルシーインフェルノにならないでくださいよ」

何だ。その激おこインフェルノってのは。

まぁ、そんなことはどうでも良い。

「それで?やっぱり帝国騎士官学校の話ですか」

「…あぁ、そうだよ」

俺は、アイズにもらった資料をルレイアにも見せた。

「帝国騎士官学校と言っても…第二帝国騎士官学校の方だけどな」

「なぁんだ」

それでも俺は、帝国騎士官学校と名のつくものを、ルレイアに見せたくなかった。

彼にとっては…思い出したくない、辛い記憶であることに変わりない。

いくら立ち直ったように見えても…。ほんの少しでもルレイアを傷つけるかもしれないものを、彼に背負わせたくなかった。

「ルレイアは、第二帝国騎士官学校のことはどれだけ知ってる?」

アイズが尋ねた。

俺とルレイアが行っていたのは、第二ではなく、第一の方の帝国騎士官学校だから…第二の方は、それほど詳しくないと思うが。

「さぁ…ほとんど知りませんね。所詮第二校の奴らは、本家の方に落ちた落伍者共の集まりですからね」

…と、帝国騎士官学校主席卒業生が申しております。

お前な。第二校に合格しただけでも、充分凄いことなんだからな?

そりゃお前にとっては大したことないかもしれないが。

「まぁ…帝国騎士官学校という名前がつく以上、糞のような連中であることに変わりはないんでしょうけど?」

「…実はその通りでね、ルレイア。裏で回ってきた情報なんだけど、遅かれ早かれ、一般でも報道されると思って…先にルルシーに伝えに来たんだ」

「俺に直接言ってくださいよ」

「ごめんね。でも話が話なだけに…先にルルシーを通した方が良いと思ったんだ」

アイズが謝る必要はない。

「ルレイア、アイズを責めるな。俺がアイズに頼んでたんだ。帝国騎士官学校の情報についてもし何か分かったら、ルレイアじゃなくて先に俺を通してくれと」

アイズは、俺の頼んだ通りに動いてくれただけだ。

「全く、心配性ですねぇルルシーは。俺があの学校を卒業して、もう何年たったと思ってるんですか…。…それで?何をやらかしたんですか。第二糞野郎養成学校は」

勝手に名前を変えるな。

まぁ…気持ちは分かるけど…。

「もう十年近く前のことだけど…。校内で事故が発生したそうなんだ」

「ほう、事故。どんな事故です?」

「詳しい経緯は分からないけど…。生徒が一人、重いものの下敷きになって、足に後遺症を負うほどの大怪我を負ったらしくて」

「…話が見えてきました。その事故を、隠蔽したんですね?」

「その通りだよ、ルレイア」

「ふん。そのくらいのことはしそうじゃないですか。いかにも奴ららしい」

ルレイアは、吐き捨てるようにそう言った。

彼の、帝国騎士官学校への恨みは、並大抵のものではない。

だが…俺も、そのくらいのことはしそうだな、と思った。