Music of Frontier

冷たいことを言うようかもしれない。

ずっと俺を気にかけ、期待し、大事にしてくれた姉。

俺は、姉のことが昔から好きだった。両親は子供に愛情を注ぐような人ではなかったが、姉だけは違っていた。

姉だけは、俺を愛してくれた。

俺がいじめられているとき、相談しても姉は俺を助けてはくれなかった。

けれど、姉に対する恩を忘れてしまった訳ではない。

両親と違って、姉だけは心から俺を愛してくれているのを知っていたから。

そんな姉に対して、薄情なことは言いたくなかった。

お前なんて姉じゃないんだから、俺には関わるな、なんて。

でも、いかに姉に罵倒されようが、説得されようが。

俺は自分の生き方を変えるつもりはなかった。

これだけは、姉にも譲れない。

「何を言っても無駄ですから。帰ってください」

「帰れだと?そもそもここは、お前の家ではないだろう。ただの居候の身分で」

それはまぁ…確かにその通り。

仕方ないだろう。そろそろまた独り暮らしに戻りたいなぁと言っても、ルクシーは「また独り暮らしに戻ったら病気になりそうだから、もう面倒臭いしずっとここにいろ」と言われる。

「そんなことない!」と言いたいけど、とてもじゃないが言えない。

今までそれで散々迷惑かけてきたから。

ただし、そんな事情を姉に説明する訳にはいかなかった。

「…良いから、さっさと帰ってください。俺は考えを変える気はありません」

「…マグノリア家の長男ともあろう者が、帝国騎士の道を捨てて、よもや顔を売る仕事をするとはな。この親不孝者めが」

「…」

そう言われて、俺はズキッと心が痛んだ。

…それは違う。