Music of Frontier

「…それで、これからどうするつもりだ?警察に通報するか…」

「あぁ、いや…。さすがに警察沙汰にはしたくないので、俺が直接話をつけようと思います」

「…」

ルクシーは、顔をしかめて俺を見つめた。

怖い怖い。

「直接…会うつもりか?」

「会いたくは…ないですねぇ」

実の親なのに、会いたくないとは。

我ながら親不孝だと思うが、やはり顔を合わせるのは嫌だった。

あの人達は俺の足が不自由だってこと知らないはずだからな。杖をついてるところも見せたくはない。

「会いたくないので、電話で済ませようと思います」

「…それで済むのか?」

「済ませますよ。『何と言われてもやめる気はない。俺はもうマグノリア家の人間じゃないんだから、言うことを聞く義理はない』それだけです」

これ以外に言うことなんてない。

「…お前の親が、それで納得するとは思えないがな…」

「まぁ納得はしないでしょうねぇ」

俺は苦笑しながら答えた。

そんなことで納得するような親なら、そもそも手紙やら電話なんてしてくるはずがない。

だから多分、喧嘩別れみたいになるだろう。

でも、「俺は言うことを聞いてやらない」ってことを、はっきり伝えることが大事なのだ。

「それでもしつこく言ってくるようなら、『R&B』にも相談して、警察沙汰ですねぇ」

「…避けたいところだがな。そんなことは」

「俺も避けたいです。みっともないですしね」

こんなの、突き詰めればただの親子喧嘩だからな。

そこに事務所やら警察やらを挟むなんて、恥ずかしくて申し訳なくて仕方ない。

嫌に決まってるじゃないか。そんなの。

でも、そうしなきゃ引き下がらないと言うのなら、そうするしかない。

「…明日、こちらから電話してみようと思います。ルクシー、傍についててくれますか?」

「聞くまでもないだろ、そんなこと。それから…俺にも一言二言言わせてくれ」

「了解です」

ルクシーにも、思うところが色々あるようだ。

電話越しとはいえ、両親と話をするのは気が進まないが…ルクシーがついていてくれるのなら、何とか頑張れる気がした。