Music of Frontier

「あーあ…。俺、このまま帝国騎士団に入って良いのかな…」

だって、このまま帝国騎士団に入っても、今と大して変わらないだろう。

うんざりするほどの縦社会。

先輩騎士、上官の言うことは絶対。

俺には最近、帝国騎士団が掲げる「正義」ってものが分からなくなってきた。

目上の人間の言うことを盲目的に遵守することが、正義なのか。

本当にこの世に、正義なんてものがあるのか。

俺には、もう分からなくなってきた。

帝国騎士官学校の生徒が考えて良いことじゃないよな。

でも、最近の俺はどうしても…ふとした瞬間に、そんなことを考えてしまうのだ。

今まで俺はずっと、帝国騎士になった姉の背中を追い続けてきた。

自分もあんな風になりたい、立派な帝国騎士になりたいと思い続け。

周りも当然、両親も、俺は帝国騎士になるものと思い込み、そのように育ててきた。

帝国騎士になる。その未来に疑いを持ったことなんてなかった。

だけど…今は。

本当にそれで良いのか、本当にそれが幸せなのか…俺は疑問に思うようになっていた。

「ルトリア…それは…」

「分かってますよ。ただの愚痴です…。本気で言ってるんじゃありません」

俺の将来は、帝国騎士になると決まっているんだから。

それ以外の選択肢なんて有り得ない。そんなこと俺にも分かってる。

ちょっと言ってみただけだ。

「俺には、帝国騎士になることしか出来ませんからね…」

その他の、一体何になれると言うんだ?

生まれてからずっと、帝国騎士になる為に教育されてきたんだから。

学校でいじめに遭ったくらいで…将来が変えられるのなら、苦労しない。

しかし、ルクシーは。

「…本当に、そうかな。ルトリア」

頬杖をついて、俺にそう問いかけた。

「…はい?」

「分からないぞ。人間の可能性ってのは…。帝国騎士じゃなくても、ルトリアにもなれるものが…。いや、ルトリアにしかなれないものがあるかもしれない」

「…」

…そんな、真面目な顔をして。

何を言い出すかと思えば、ルクシー。

「…あはは…。漫画読み過ぎでしょ、ルクシー」

「茶化すなよ…。有り得ない話じゃないだろ?」

「有り得ない話ですよ。俺には帝国騎士になることしか出来ませんよ」

他に将来の選択肢なんてあるものか。

大体、それ以外のものになるなんて、家族が許しちゃくれないよ。

俺には、お勉強と剣術の才能しかないんだし。

帝国騎士になれないなら、俺なんて何にもなれないだろう。

「…だから、どんなに辛くてもしんどくても…。卒業するまで、耐えてみせますよ」

…多分。

多分、だけど。

ここで耐えなきゃ、俺の帝国騎士としての未来は閉ざされる。

なら、何がなんでも…辛くても、しんどくても…耐えなければ仕方ない。

耐えるしかないのだ。

「…せめて、姉さんに相談してみろよ」

…俺が言わないなら自分が言う、だっけ?

分かった分かった。ルクシーは心配性だな。

「分かりました。話してみますよ」

「…ルトリア、これだけは覚えていてくれ」

「はい?」

ルクシーは真っ直ぐに俺の目を見て、こう言った。

「…お前がどうなろうと、俺はお前の味方だからな」

この言葉がどれほど重い意味を持つのか、そのときの俺には…まだ分かっていなかった。