Music of Frontier

「…それで?俺に話したいことっていうのは?」

「…それが…その」

ユーリアナさんの、この言いにくそうな顔。

それで、もう何となく察しがついた。

「…良いですよ。何でも言ってください」

「…数週間前、お手紙を見せましたよね。ルトリアさんに…」

「…えぇ。処分しておいてくれ、って言った悪戯ファンレターのことですよね」

「はい」

…やっぱり、その話か。

そうだろうと思ったよ。ユーリアナさんがこんなに言いにくそうに切り出すのだから。

「それが何か?」

「あれからも、何通か同じような手紙が届いて…。その都度処分していたんですが…。すると最近、今度は手紙じゃなくて…事務所に電話がかかってくるようになって」

「…」

「ルトリアさんを出せって、何度もしつこくて…。あまりにしつこいので、もう警察に通報しようかという話にもなっているんです」

…あの野郎共。

手紙は効かないと踏んで、今度は電話攻撃に出たか。

「一応ルトリアさんにも報告しておこうと思いまして…」

「…いえ。警察沙汰にする必要はありませんよ」

「え?」

あんな奴らの為に、労力を割く必要はない。

相手は一応貴族なのだ。警察沙汰にすれば揉めることになる。

『R&B』への風評被害も無視出来ない。

それに、『frontier』にも迷惑をかける。

俺のせいで、彼らに迷惑をかける訳にはいかない。

ただでさえ、摂食障害のせいで随分迷惑をかけたのに。

「分かりました。俺の方で話をつけるので」

「でも、ルトリアさん…それは…」

「大丈夫。『R&B』にも、『frontier』にも迷惑はかけませんから。安心してください」

奴らの目的は、俺なのだ。

だから、俺が話をつける。

それで済むはずだ。

「…ルトリアさん。一人で背負い込まないでくださいね。あなたの後ろには、たくさんの味方がついてます。私も、勿論その一人です」

「ユーリアナさん…」

「何があっても、一緒に戦いますから。一人で無理だと思ったら、いつでも頼ってください。喜んで力を貸します。皆、あなたの味方ですから」

…そうだったね。

百人力というものだ。それは。

「分かりました。覚えておきます」

「はい。お願いします」

ユーリアナさんは、にっこりと微笑んだ。