Music of Frontier

俺は手紙をゴミ箱に捨て、一切を忘れてしまった。

ルクシーにも、このことは話さなかった。

ルクシーに話せば、きっと彼は怒るだろう。

今まで散々無視しておきながら、いきなり連絡を寄越して、挙げ句「アイドルをやめろ」とは何事かと。

何処までルトリアを侮辱するつもりだ、と怒り狂う姿が見える。

そして、そのせいで俺がまた落ち込んだりしないかと、俺以上に気を揉むだろう。

ルクシーが思い悩む必要はないのだ。

あんな低俗な人間の為に、一分たりとも使う時間はない。

だから、ルクシーには何も言わない。

ユーリアナさんには、今後この手の手紙が届いたときは、迷惑メールならぬ迷惑ファンレターとして処分してくれ、と頼んだ。

彼女は何も聞かず、あっさりとした口調でただ「分かりました」とだけ言った。

その気遣いが有り難かった。

「済みません、迷惑かけちゃいますね」

「とんでもありません。『frontier』は人気者ですからね。この手の厄介なファンレターはしょっちゅうですよ。こちらも慣れていますから、気にしないでください」

ユーリアナさんは、何でもない風にそう言った。

彼女も、何も気づいてない訳ではないだろうに。

あくまでも「よくある厄介なファンレター」ということにしてくれた。

ユーリアナさんには、感謝しかない。

ともかく、これで両親からの手紙を見ることはあるまい。

俺はそう思って、安心していた。




しかし。