Music of Frontier

「…はぁ」

読み終えるなり、俺は盛大に溜め息をついた。

…今夜、ルクシーがいなくて良かった。

こんなもの、ルクシーに見せたら…夜中だということも忘れて、大激怒していただろう。

俺だって…怒りはしないが、でも呆れはする。

そう。俺は呆れていた。

一体、何を言ってるんだと。

手紙の内容は、案の定俺の思った通りだった。

向こうも向こうで、怒りに任せて色々書いてきたが。

言ってることは一つ。要するに、「今すぐ『frontier』をやめろ」。これだけだ。

…俺が『frontier』をやってることを知れば、まぁ、そう言ってくるだろうと思ってたよ。

とはいえ、便箋の中に『frontier』の文字は一つもない。

もっと手酷い言い方だ。「アイドルなんてみっともないもの、すぐやめろ」と。

言いたいことは分かったけどさ。もっとこう…言い方ってものがあるだろうが。

全国のアイドルの皆さんに謝れ。

あと、俺にもな。

俺が『frontier』の活動をしていることを知れば、両親がそれに反対することは分かっていた。

それは始めから分かっていたことだ。

あの人達が、芸能活動なんて認めるはずがないからな。

よく知りもしない癖に、テレビや雑誌に出ているタレントを見れば、「浮わついた、低俗な仕事だ」と鼻で笑う。

ましてや、写真集やファッション雑誌のモデルなんて、顔を売り物にした仕事なんて、絶対許さないだろう。

あの人達にしてみれば、風俗の仕事と大差ないと思ってるだろうからな。

雑誌に出ている俺も、その雑誌を読んで楽しんでいる人も、皆低俗な人間。

品性の欠片もなく、卑しい、下品な仕事。

所詮自分達貴族には縁のない、下民の娯楽だと思い込んでいる。

そんな下民の娯楽を、自分の息子が仕事にしているなんて知れば。

そりゃあ、怒髪天突いて怒るのは当然だろう。

少なくとも、あの人達にしてみればな。

手紙には、俺に対する批難がつらつらと書き連ねてあった。

今すぐそんな仕事はやめろ。みっともない。

「マグノリア家の恥さらし」というフレーズが、三枚の便箋の中に5回以上出てきている。

マグノリア家の恥さらしって言われても。俺、もうマグノリア家から追い出されてるんですけど?

あの人達からしてみれば、俺は今でもマグノリア家の顔の一つなのだ。

「元マグノリア家の息子が、今はアイドルをやっている」。

これだけで、あの人達にとっては恥さらしなのだ。

ここでもまた、体裁。体面。世間体。

お疲れ様だな。全く。

「…下らない」

俺は便箋をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱に捨てた。

手紙には、俺への恨み節しか書いていなかった。

今すぐアイドルやめろ、とは書いてあったけど。

それ以外のことは何も書いていない。会いに来いとか、元気でやってるのかとか、俺を心配する文言は全くない。

何処までも、マグノリア家の体面のことだけ。

あの人達の思考回路なんて、所詮はその程度だ。