帰宅後。
俺は、その手紙をもう一度取り出した。
…差出人を、もう一度確認する。
「…」
…本当、今更何の用だろうか。
差出人は、マグノリア家…つまり、俺の実家だった。
実家の両親。
…実の家族からの連絡なんて、一体いつ以来だ?
俺が寮生活をしている間でも、手紙を送ってきたことなんてなかった癖に。
実家から絶縁された今になって、手紙を送ってくるとは…一体どういう風の吹き回しなのか。
俺はもう、マグノリア家の人間ではない。その名前も、権利も、既に剥奪されたのだから。
だから、彼らももう俺に用事なんてないはずだ。
それなのに…今更、俺に何の用だ?
俺にはもう、家督の相続権もないのだが?
いや、むしろだからこそか?
家督相続権を放棄したことを、正式な文書にしろとか?
そんなもの、勝手にやってくれれば良いものを。
「…はぁ…」
俺は溜め息をつきながら、封筒から便箋を取り出した。
家督相続権云々の話なら、まだ良い。
それなら楽なもんだ。家督相続権なんて今更頼まれたって要らないのだから、向こうが「放棄しろ」と言うなら、喜んで捨てる。
もう既に捨てているのだから、惜しくも何ともない。
文書に残せと言うのなら、向こうの言う通りサインでも何でもしてやる。
だから、そういう話なら良い。
煩わしいけど、でも逆に言えば「煩わしいなぁ」で済む話。
ユーリアナさんに頭を下げて、一日くらいスケジュール空けてもらえば、それで話は終わる。
…でも。
もしこの手紙の内容が、俺の想像している通りのものだったら…。
それだけでは、話が済まなくなる。
俺は憂鬱な気分で、手紙を読み始めた。


