Music of Frontier

「ふぉぉ~…!」

「だみだ~!腕疲れた!」

「黙って書け。気が逸れるだろ」

「疲れたな…。ジュース飲みたい…」

「ジュースは駄目だ。溢れたら大惨事だからな」

「皆さん、あと200枚あるので頑張ってください」

「ふぁぁぁ!」

ドサッ、と色紙をテーブルに置くユーリアナさん。

あれが…あれがノルマだと言うのか。

心と、あと手が折れそう。

「くそっ、誰だよ?セカンドアルバム抽選500枚でメンバーの直筆サイン色紙付きなんて、アーティスト泣かせの企画を思い付いた奴は?」

手をぶんぶん振りながら、エルーシアが憎々しげに言った。

そう。俺達はこの日、来たるセカンドアルバム発売に向けて、500枚のサインを書かされていた。

こんな地味な仕事してんだよ。アーティストって。

地味だけど、大切なお仕事だ。

少し前までの俺なら、「こんなの500枚も書いて、買ってくれる人が500人いなかったらどうするんだろう…」なんて、本気で心配していただろうが。

多分、500人は買ってくれる人もいるだろう。

だから、今書いているこのサインは、きっと無駄にはならない。

今は、そう思うことが出来る。

それを自惚れと言うなら、そうなんだろう。

これを楽しみに、抽選に応募してくれる人がいるかと思うと、文句言わずにやろうと手を動かすのだが。

500回、名前書いてみ?

腕、疲れるよ?

「よし。エル、これ終わったら、今日はピザ食うからな。ピザ食いに行こうぜ!」

「エルーシアさん、残念ですが今日のラジオ担当、エルーシアさんとルクシーさんなので、ピザは無理です」

「でぇぇぇ!そうだった!」

「代わりと言ってはなんですが、コンビニでピザまん買ってくるのでそれで妥協してください」

「おふざけか!ピザとピザまんの間には越えられない壁がある!ミニトマトとプチトマトくらい違うぞ!」

あれ?それ同じものじゃない?

「仕方ないね。私がエルの代わりに、今夜宅配ピザを頼むことにするよ」

そして、追い討ちをかけるベーシュさん。

「良いなぁぁ…!明日、味の感想を教えてくれ!」

「分かった。任せて」

「良いからお前ら、手を動かせ。終わらんぞ」

ちょっと手の動きが機械的になってきたから、お喋りする余裕が出てきたってことなんだろうな。

と、こんな感じで和気あいあいとしている、『frontier』である。