Music of Frontier


…その日の夜。






「…ルトリア。身体は平気か?」

「あ、ルクシー」

エルフリィ家の自室でまったりしていると、ルクシーが訪ねてきた。

相変わらずの心配性か。

「まだ寝てなかったんですか、ルクシー」

「お前こそ」

確かに。

「…皆の手前、平気そうな顔をしていたが…。本当は…思うところがあったんだろ?」

「…何で、そう思うんですか?」

「…はぐらかすなよ。何年お前の親友やってると思ってるんだ」

…全くだな。

ルクシーの目を誤魔化そうなんて、百年早いってものだ。

「まぁ…。思うところが全くない訳じゃないですよ」

「…やっぱり、お前…無理して…」

「無理はしてないですって。後悔もしてないですし。ただ…」

「ただ?」

「自分で思ってるより…過去に囚われてたんだなーって」

もう…すっかり立ち直ったつもりでいたんだが。

そう上手く行かないものだな。

「多分…一生ついて回るんでしょうね…」

「ルトリア…」

「…でも、潰されたりはしませんよ」

誰が、潰されてやるものか。

過去に囚われて、前に進めない俺はもういない。

過去を受け止めて、俺はそれでも前を向く。

そう決めた。

今なら、それが出来るから。

「俺を必要としてくれる人がいる限り…俺は潰されたりしません」

「…そうか。強くなったな…ルトリア」

「でしょ?」

「絹ごし豆腐が…木綿豆腐くらいには強くなった」

「ちょっと~!何その例え。結局豆腐ですか!」

別に良いよ?お豆腐美味しいし。

俺は木綿派。

「…ずっと傍にいるからな、ルトリア」

「…えぇ。ずっといてください。俺の隣に」

そうしてくれる限り、俺は何処まででも進んでいくことが出来るから。