Music of Frontier

帝国騎士団が、毎年慰労会とやらを開いていることは知っている。

一応、俺も元帝国騎士だからな。スパイだけど。

で、その慰労会で、ルレイア達が熱を上げている『frontier』がライブをすると?

まぁ、そこまでは分かる。

『frontier』は、若者に人気のバンドだからな。帝国騎士団には若い帝国騎士も多いから、慰労会のコンサートに『frontier』が呼ばれること自体は、納得出来る。

「…で、何でお前がそれに行くんだ?」

「誘ってきたんですよ。オルタンスが。『frontier』の特別ライブやるから来ないかって」

「…」

…まぁ、それも…有り得る話だな。

何でかは知らないが、オルタンスはルレイアにお熱らしいから。

もしかして、ルレイアを呼びたいから『frontier』のライブを企画したんじゃないだろうな?

帝国騎士団の慰労会なのに、何で平気で俺達を呼ぶんだ。

あいつ、俺達が敵対組織だってこと覚えてるか?

…それで。

俺が一番突っ込みたいことは。

「…お前ら、まさかとは思うが…行くつもりじゃないよな?」

「え?行きますよ?招待券もらいましたし」

「…もう一度聞いてやる。お前ら…行くつもりじゃないよな?」

「だから行きますって。タダで『frontier』のライブに行けるんですよ?それも帝国騎士団慰労会、特別ライブ。招待でもされなきゃなかなか行けないですからね」

…そうか、成程。

「…お前ら馬鹿か!何考えてるんだ!」

俺は渾身の拳を振り上げたが、当然ルレイアは華麗にそれをかわした。

おのれ。

「ぶはは!ルル公、さっきの物真似まんまの台詞だ~!似てる~!」

指差して笑うアリューシャ。腹が立ったので、ルレイアの代わりにアリューシャをぶん殴っておいた。

「いてぇ!ぶったな!アイ公にもぶたれたことないのに!」

「うるせぇ!元々アイズはぶたんだろ!」

「ちょっとルルシー。アリューシャに暴力振らないで。アリューシャが真似するようになったらどうするの」

「え?あ、済まん…」

俺に殴られた箇所をよしよし、と撫でてやるアイズ。

お前…アリューシャの保護者か。いや保護者なんだけど。

ってか何で俺が怒られるの?

「ルルシーも一緒に行きましょうね。ライブ」

「…」

にこっ、と微笑むルレイア。

「原則帝国騎士じゃないと観られないライブだからな。ルレイア先輩のコネがあって良かったよ」

「そうですよ~。オルタンスが招待してくれなかったら、帝国騎士の女をたぶらかして、変装して忍び込まなきゃいけないところでした」

「全くだ。そうなると手間がかかるからな」

お前らには、ライブを諦めるという選択肢はないのか?

放っといたら本当にやりかねないから怖いよ。