Music of Frontier

こいつらが無事なのが分かったら、さっさと帰ろうと思ってたけどさ。

とてもじゃないが、このままじゃ帰れない。

こいつらが、一体何を企んでいるのか確認するまでは。

とにかく、俺が今やるべきことは。

現行犯逮捕だ。

「…お前ら!何の相談してるんだ!」

俺はルレイアの部屋の扉を開け、中に突入した。

現場を抑えられれば、こいつらも言い訳は出来まい。

「きゃっ★ルルシー!いきなり入ってくるなんて!えっち!」

「お前にだけは言われたくねぇ!」

「ルルシー先輩。女子会の中に入ってくるなんて無粋だぞ?」

「女子は一人しかいねぇよ」

ほぼ野郎だろうが。何を言ってるんだ。勝手に女子になるな。

「お前ら、今日は珍しく俺の部屋に来ないからどうしたのかと思えば、俺に隠れて何こそこそ密談してるんだ」

俺に言えないようなことなんだろ?

何の相談だ。

すると。

「なんだ、ルルシー先輩…。一人ハブられて、寂しかったのか?」

「は?」

「大丈夫だ。ちゃんと話してあげるからな。ルルシー先輩だけ仲間外れにはしないから」

小さい子を宥めるように、ぽん、と肩に手を置くルリシヤ。

…何だ。その気持ち悪い誤解。

そんな気持ち悪いこと言うもんだから、ルレイアの目が、きらんきらんしてる。

「ルルシー!寂しい思いをさせてごめんなさい!俺はいつでもルルシーの傍にいますからね。もう二度と寂しい思いなんてさせませんから!お風呂の中でもベッドの中でもあなたの傍に寄り添ってますから!」

「寄り添わんで良い!引っ付くな馬鹿!別に寂しくなんてねぇよ」

風呂やベッドの中でこいつに寄り添われるなんて、どんな悪夢だ。

「そんなことより!お前ら、何を企んでるんだ」

お前らのことだから、どうせろくでもないことを考えているに決まってる。

それを確認しないことには、安心して仕事に戻れない。

「企んでるって?」

「惚けるな。さっき聞こえてたんだからな。俺に知られちゃいけないようなこと話してただろ」

「あぁ。あれ聞いてたんですか?もー、盗み聞きなんて…。ルルシーったら、えっちなんだから」

こっそりルアリスに盗聴器仕掛けて、笑いながら盗み聞きしてたお前に言われたくねぇ。

「白状しろ」

「え~…?ルルシー、怒ります?」

「怒るに決まってるだろ。早く言え」

特大の雷をお見舞いしてやるよ。

まぁ、雷が通用する相手ではないのだが。

「ルルシーに怒られるなら言いません」

「…」

…何だと?

「だって俺、ピュアで繊細な心の持ち主ですから。怒られたらショックで立ち直れません」

目をうるうるさせ、際どい上目遣いでこちらを見上げるルレイア。

こいつ…。

すぐぶちギレて死神モードに入ったり、自国のみならず他国の政府にも平気で喧嘩売るような奴の、何処が繊細だって?

「…分かったよ。怒らないから言ってみろ」

「はい。帝国騎士団の今年の慰労会、『frontier』のライブをするらしくて。オルタンスが来ないかって言うので皆で行こうと思って」

うん、成程。

とりあえず、俺は特大の拳骨をルレイアにお見舞い…しようとしたのだが。

さすがは元帝国騎士団四番隊隊長、素晴らしい反射神経でかわしやがった。

「酷い、ルルシー!今殴ろうとしたでしょ!」

「避けるな馬鹿」

「怒らないって言ったじゃないですか!」

「怒るなとは言われたが、殴るなとは言われてないからな」

まぁ、かわされてしまったが。

…で、こいつらの密談の内容が分かった。

突っ込みたいことが山ほどあるので、まず一つずつ潰していこうか。