Music of Frontier

──────…俺はその日、酷くそわそわしていた。

…と、いうのも。

「…」

…誰も来ない。

俺の執務室に、誰も訪ねてこない。

いつもは、午後にならないうちから、幹部仲間達が俺の部屋にたむろしに来るのに。

特に、俺の相棒とか。

最早ここを自分の部屋だと思ってるんじゃないかってくらい、入り浸ってくるのに。

入ってくるな仕事しろ、と口が酸っぱくなるほど言っても、全然聞く耳を持たなかったのに。

だから俺はもう諦めて、自分の執務室が幹部仲間の溜まり場にされようと、約一名の昼寝場にされようと、無視していることにした。

…それなのに。

…今日は、午後になっても誰も来ない。

これはどうしたことだ。

…ってか、誰も来ないことに違和感を覚えるようになってしまったのだが?

いや、だってもう何年も、毎日だぞ?

家主の俺がいないときでも、当たり前のように溜まり場にされてるのに。

今日に限って来なかったら、そりゃ心配にもなるだろう。

もしかして、あいつら、今日出勤してないのかな?

そう思って部下に聞いてみると、「え?いや、朝姿を見ましたよ…?」と言われた。

ということは、やっぱり出勤はしてるのだ。なのに、何でここに来ない?

…何かあったんだろうか。

何で俺がこんな心配をしなきゃならないんだよ。

何かあったのではと気が気でないので、電話でもしてみようかと思ったが。

「も~ルルシーったら、さびしんぼさん♪」とか言われそうで癪。

そう思って今のところ連絡はしていないが、やっぱり気になって、さっきから仕事に手がつかない。

俺がイライラしているのを察した部下が、こう申し出た。

「あの…俺がルレイアさんを探してきましょうか?」

「いや…別にそんなことまでしなくて良い」

「でも、心配なんでしょう?」

「別に…心配なんかしてない」

「大丈夫、分かりますよルルシーさん。俺だって、前、家に帰ったとき嫁がいなくて、何処に行ったのかと心配で、裸足でマンションの周りを探し回ったことありますから」

「…」

…まぁ、お前はそうだろうな。

その姿が目に浮かぶよ。

「…で、結局嫁は何処にいたんだ?」

「近所の空き地で、生け贄を捧げる儀式をしてたそうです。それならそうと言ってくれれば良いのに。無事で良かったですよ~。本当心配しました」

「…」

にこにこしてるところ悪いけどさ。

儀式の方を心配しろよ。何やってんだお前の嫁。

…はぁ。

「とりあえず…無事なのかどうかだけでも確かめた方が」

「いや…本当、大丈夫だから」

あいつだって良い大人なんだから…。別に、俺が監督してなくてもだいじょ、

いや待て。大丈夫じゃない。

俺が傍についてなかったら、平気で暴走するような奴なのだから。

…やっぱり、気掛かりだ。

「…分かったよ。ちょっと探してくるから…この書類、俺の代わりにアシュトーリアさんに届けに行ってくれないか」

「分かりました。…慌て過ぎて転ばないようにしてくださいね?ルルシーさん」

嫁を探して、裸足でマンション周りを駆け回った奴に言われたくねぇよ。

俺は部下に書類を託し、執務室を出た。

…はぁ。全く…何で俺がこんなことを。