Music of Frontier

今思えば、そんなんで良いのか、と突っ込みたいところだが。

そんなんで良かったのだ。

「それまでは歌なんて歌ったことなかったんで。国歌とポテサラ音頭くらいしか知らないくらいで…」

「へぇ…。それなのに今や、人気バンドのボーカルですもんね。じゃあ、天賦の才能だったんですね」

「そうなんですかね…?自分でそういうこと言うのはあまり好きじゃないですけど」

まぁ、ちょっとの才能と、あとは運と。

それと、こんな俺でも辛抱強く支えてくれた仲間のお陰だな。

恥ずかしいから、こんなことはインタビューでは言えないが。

「それじゃあ、次の質問ですが…。秋から全国ツアーも始まりますよね。意気込みはどうですか?」

意気込み…かぁ。

そうだな…。

「初めての全国ツアーですからね。意気込みは充分ですよ。いつもは緊張が先に来るんですが…今回は楽しみの方が大きいです」

「楽しみですか?」

「えぇ。来てくれるお客さんに満足してもらえるよう、全力で頑張ります」

よしよし。意気込みはこれで充分だろう。

「成程…。じゃあ、次の質問良いですか?」

「はい、何でしょう」

尋問か取り調べか、と思っていたが。案外良い感じじゃないか。

このままこの調子で、

「ルトリアさんの好きな女性のタイプは何ですか?」

「…」

…えーと。

…ここ、以前俺が勤めてた予備校じゃないですよね?

何だか、生徒達に散々聞かれたことを、もう一回聞かれてるような気がする。