Music of Frontier

そして今日も、我らが帝国騎士団長は、絶好調にキモかった。





「…実は、皆に相談があるんだが」

「断る」

「…」

俺とオルタンスは、無言で見つめ合った。

相変わらず表情が薄くて、何を考えているか分からないが。

お前の魂胆は分かってるぞ。

「あ、あの…。アドルファス殿?一応…内容を聞いてから断った方が良いのでは…」

真面目な四番隊のルーシッドが、俺をそうたしなめたが。

「お前、何回巻き込まれたと思ってる。まだ学習してないのか」

「…まぁ…そうですが…。もしかしたら今日は…今度こそ、真面目な相談かもしれないと…」

「ないな」

お前がそうやって毎回真面目に話を聞くから、こいつが付け上がるのだ。

知るか。自分で決めやがれ。

こんな重要な会議で、上司からの相談を「知るか。自分で考えろ」と突っぱねるなんて、と思った奴がいるかもしれないが。

お前は、知らないだけなのだ。

この馬鹿が今まで、俺達に何を相談してきたのかを。

…これがもし、国の重要事項や帝国騎士団の趨勢を左右する相談であれば、俺だって真面目に、真剣に相談に乗る。

帝国騎士団の隊長としての職務は、きっちりと果たすつもりだ。

だが。

この馬鹿の、下らない初恋(?)とやらの為に割く時間は、一分たりともない。

「どうせ、またルレイアにプレゼントを送るとか、メールが来たんだとか、そういう話だろ」

「惜しいなアドルファス。何で分かるんだ?」

何でじゃねぇよ。いつもそうだろうが。

「だが、今日はちょっと違うぞ」

「…あ?」

「どちらかと言うと、これは帝国騎士団についての相談だ」

…何だと?

帝国騎士団と、あいつと、今や何の関係があるんだよ。

オルタンスの相談なんて、二度と聞くものかと思っていたが。

帝国騎士団に関係のあることなら…聞かない訳にはいかなかった。

「…で?何だよ。相談って」

「二ヶ月後に、毎年恒例の慰労会が開かれるだろう?」

「…あぁ」

帝国騎士団には、一般企業にしばしばあるような、社員旅行などはない。

代わりに、毎年慰労会として、ホテルを借り上げて食事会を開いたり、貸しきりでコンサートや演劇を観たりする。

参加条件は、帝国騎士団に所属する帝国騎士であること。これだけだ。

つまり、帝国騎士であれば、誰でもタダで参加出来る訳だ。

参加は強制ではない。行きたくなければ行かなくても良いし、実際俺も行っていない。

演劇にも興味はないし、そんなことをしている時間が惜しいからだ。

まぁ…普段一生懸命働いてくれている帝国騎士に、たまの息抜きの機会を与えてやる。

それが、帝国騎士団の慰労会だ。

「…で、その慰労会が何だって?」

…今までの、無数の経験上。

何だか、もうこの時点で嫌な予感がするのだが?