Music of Frontier

「…文句?文句って何だよ?」

「え…だって、こんな…病気なんかになって…皆に迷惑かけて…」

解雇通知…まではなくても。

お前面倒臭いんだよ、とか。

仕事に穴を開けるつもりか、とか。

そういう文句や罵りの一つ二つくらい、ぶつけられて当然だと思っていた。

しかし。

「お前は迷惑なんかかけてねぇよ。心配をかけてんだ。これは大きな違いだぞ」

と、エルーシア。

そして、ミヤノも。

「まぁ…心配は確かにかけられてるが、でも、それくらいで文句言ったりしないよ。仲間だろ?支えるのが当然だ」

「…!」

…そんな。

更に、ベーシュさんは。

「私は心配すらしてないよ。ルトリアはまた元気になって戻ってくるって分かってるもの。今は、ちょっとフラフラしちゃってるだけ。だからその間は、私達が支えてあげる」

「ベーシュさん…」

「『frontier』のボーカルは、世界中何処を探したって、あなたしかいないんだもの。そうじゃない?」

…どうやら、俺は勘違いをしていたようだ。

俺にとって、彼らが唯一無二の仲間であるのと同じように。

彼らにとっても…俺は…。

…そう、思っても良いんだね。

「…皆さん。これから…しばらく、俺、皆さんに色々…迷惑とか…心配とか、色々かけてしまうと思うんですけど…」

もし、良ければ。

あなた達が、それを許してくれるなら。

それでも、俺を選んでくれるのなら。

「こんな…不甲斐ない、情けないボーカルを…許してくれますか?」

俺にとっては、物凄く勇気の要る質問だった。

許さないと言われたら、二度と立ち直れないくらい悲しいだろうから。

だから、これは一種の賭けだった。

彼らが受け入れてくれるのなら、俺は…。

すると。

「…聞くまでもないだろ。馬鹿」

ミヤノは、呆れたようにそう言った。

エルーシアと、ベーシュさんも頷いた。

そして、ルクシーも。

「お前が許すなって言っても許すから、安心しろ」

「…ありがとう」

俺は、もう大丈夫だ、と思った。

こんな仲間がいてくれるのだから。

自分に価値があるか、ないかなんて、随分とつまらないことを考えていたものだ、と思った。