Music of Frontier

エルフリィ家に戻ってきた、翌日。

ミヤノ、エルーシア、ベーシュさんの三人が、エルフリィ家を訪ねてきた。





「ルトリーヌ~っ!うぉぉ~っ!」

「わっ…びっくりした」

俺の顔を見るなり、エルーシアが飛び込んできた。

「こら、エル。いきなり飛び付くな」

ミヤノが、そんなエルーシアを俺から引き剥がした。

「だってよぉ…。ルクシーヌが物騒なメール寄越してくるもんだから…」

「まぁ…ある程度覚悟はしてたけどな」

…ルクシーの、物騒なメール。

昨日、ルクシーは皆に伝えてくれたのだ。

俺が…その、また厄介な病気になったことを。

出来れば言いたくなかったが、家族同然の彼らに、隠しておくことは出来なかった。

俺の口から直接言えば良いのだが、それはあまりにも情けなくて。

代わりに、ルクシーが伝えてくれた。

自分が情けなくて仕方ない。

「皆…どうしたんですか?今日は…」

まさか三人が訪ねてくるとは思わず、俺は身構えてしまった。

もしかして…三人共、俺を責め立てる為にやって来たのではないかと思ったのだ。

『frontier』の活動に悪影響を及ぼすつもりじゃないだろうな、と。

あるいは…そんな状態で活動を続けられても困るから、いっそメンバーを抜けてくれ…と。

もし、そう言われたら…俺はどうしよう?

…どうしよう、なんて聞くまでもない。

彼らが「抜けてくれ」と言うなら、俺には頷くことしか出来ない。

どの面下げて、もう少し待ってくれ、などと言えようか。

こんなに迷惑と心配をかけて。

彼らが何と言うかと思うと、怖くて、俺は顔を上げられなかった。

すると。

「どうしたんですかじゃねぇだろ~!よし、ミヤーヌ!あれを出せ!」

「よし来た」

…あれ?

あれって何だろう…。

まさか、解雇通知…的な。

それとも違約金の…。

などと身構えていると、ミヤノは白い紙袋をドサッ、と俺の目の前に置いた。

…?

「…これは…?」

「お前の好きなチョコプリンだ。お一人様10個までだから、三人で朝から並んで、30個買ってきた」

えっ。

「…」

俺がぽかんとしていると、エルーシアは悔しそうに唸った。

「くっ…!駄目か。好物なら食べると思ったんだけどな」

「そりゃ、そう簡単には行かないだろう」

「仕方ない。よし次だ!ミヤーヌ!」

「分かった。次はこれだ」

えっ、次?

今度こそ解雇通知か、と思ったら。

今度は、茶色い紙袋をドサッ、と置いた。

「…これは?」

「今SNSで有名な、シフォンケーキ専門店の紅茶シフォンケーキだ。これは三時間並んだ」

「…」

またしても、俺は言葉が出てこなかった。

すると。

「…駄目か!これでも駄目なのか!?」

「やっぱりチョコレートの方が良かったんじゃないか?シフォンケーキより…」

「だってチョコプリンとチョコだと、チョコが被るだろ?」

「いや、まぁそうだけど…」

…二人共、何の話をしているのだろう。

すると今度は、ベーシュさんが。

「二人共分かってない。そんなものじゃ駄目なんだよ」

ふるふる、と首を横に振りながらそう言った。

ミヤノとエルーシアは何やらずれている気がするが、ベーシュさんは違う。

彼女は、俺に何をくれてやるべきか、分かっている。

今度こそ解雇通知…と思ったら。

「…はい、これあげる」

ベーシュさんは、クリーム色の紙袋を差し出してきた。