Music of Frontier

…背?

俺も、ルクシーもきょとんであった。

「えっと…エインリー先生…?」

「え、あ、いやごめん。前見たときより背が伸びたなぁと思って。久し振りだね二人共。相変わらず仲良さそうで安心したよ」

…えっと。

「実はね、動画をよく観てるから…二人共相変わらず仲良しなんだな~とは思ってたけど…」

「え…動画観てたんですか?」

「観てたよー。実はラジオもたまに聞く。君達良い歌歌うよね~」

「…」

…そうだったんですか。

「…それで、今日はどうしたのかな?」

エインリー先生は、相変わらずにこやかにそう尋ねた。

途端に、俺は情けなくて俯いてしまった。

「…済みません…」

「何に謝ってるの?」

「…もう戻ってこないって言ったのに…」

…結局、戻ってきてしまっている。

情けないことこの上ない。

しかし、エインリー先生はあっけらかんとして、

「なぁんだ、そんなこと?」

何でもないみたいな顔で、そう言った。

そんなこと?って…。

「私は、多分君はまた戻ってくるだろうと思ってたよ」

「…え」

俺って…そんなに信用なかったのか。

医者の目から見てもポンコツだったと、そういう…。

「あぁ、いや。そういう意味じゃない。そもそもね、精神疾患は再発しやすい病気だから。治ったように見えても、ほんの小さなきっかけでまた具合が悪くなって、戻ってくる人は少なくないんだよ」

「あ…」

…そういうことか。

俺に限った話ではないと。

「そういうのも繰り返しながら治していくものなんだよ。大丈夫。ちゃんと良くなるよ、君は」

「…良くなる…と、思う根拠は?」

「え?そりゃだって君には、ルクシー君がついてるんだもん」

「…」

「だから大丈夫。君に関しては特に心配してないよ」

…そんな、にこっと笑って言われてしまうと。

あ、そうですか…としか言えない。

「そりゃあね、二度と戻ってこないならその方が良かったけど。そう上手くは行かないでしょ」

「…」

「で…症状は?どんな感じ?」

「…」

あまりの情けなさに、俺が答えずにいると。

ルクシーが、代わりに答えてくれた。

「…見ての通りです」

「…うん。まぁね…。確かに見ての通りって感じだねぇ」

さすがに…バレるか。

本職の目は誤魔化せない。