Music of Frontier

帝都にある、△△病院。

そこの、精神科。

かつて俺が二年を過ごし、その後もしばらく通い続けた病院である。

ここ最近は、ずっとお世話になっていなかったが…。

…また、ここに戻ってくる羽目になるとは。

我ながら、自分が情けない。

病院の待合室で、俺はずーん、と沈み込んだ。

またここのお世話にならなきゃならないなんて…。

それだけで、憂鬱な気分が加速する。

エインリー先生…何て言うかなぁ。

「また戻ってきやがって、情けない奴だ」と思うだろうな。

自分でもそう思うくらいなのだから。

ルクシーに申し訳ない。こんなところに、また来させてしまって…。

あとはもう大丈夫なので、ルクシーは帰ってください、と。

言いたいのに、言えない。

むしろ、こんな甘えたことを口にしてしまう。

「…ルクシー、診察室までついてきてくれます?」

さすがにそれは、一人で行けよ、と言われるかと思ったが。

「分かった」

ノータイムだった。即答だった。

本当は嫌だろうに。

俺も一人で行けたら良いのだが、どうしても一人では心細かった。

エインリー先生も…ルクシー同伴でも、認めてくれるだろう。多分。

そうこうしているうちに番号を呼ばれ(ここの精神科は、プライバシー保護の為名前でなく番号札で呼ばれる)、俺は反射的に身を堅くした。

処刑執行の合図を聞いたような気分だった。

「大丈夫か?立って歩けるか」

ルクシーは、そんな俺を心配したように尋ねた。

「無理なら、車椅子持ってきてもらうけど」

「…大丈夫ですよ。一緒に来てくれれば…」

「…分かった」

立ち上がった途端に、ふらり、と倒れそうになるのをルクシーが支えてくれた。

昔、ここに入院していたときずっと感じていたような…胸に重石をつけられたみたいな、嫌な感じがした。

…本当、情けなくて涙が出そうになる。

ルクシーに付き添われながら診察室に行くと、見慣れたエインリー先生が待っていた。

あまりにも恥ずかしくて、どうしてもエインリー先生の顔が見られなかった。

また戻ってきたのか、と呆れた顔をしているかと思うと。

情けなくて、惨めで仕方なかったのだ。

しかし。

「…あれぇ。君達…背、伸びた?」

エインリー先生の第一声は、そんなありふれたものだった。