Music of Frontier

俺がこんな風に考えるようになってしまったのは、恐らく。

幼い頃から、「帝国騎士になれないのなら死ね」と言われてきたこともあるのだろうが。

加えて、先日のテレビの一件で、忘れていたネガティブ思考がまた戻ってきたからなのだと思う。

自覚はある。今の俺は…多分病的なんだ。

ルクシーが、本気で心配して訪ねてくるくらいには。

「…自分に自信を持ちたいです。どうしたら良いのか、分からないけど…」

「…」

俺は多分、周りが思ってるよりずっと、自己評価が低いのだ。

自分なんてそこら辺に落ちてる小石ほどの価値もない。そんなことはないはずなのに、無意識に、そう思ってしまっている。

せめて、俺は道端に落っこちている一円玉くらいの価値はある…と、思いたい。

それすら自惚れだと思ってしまうのだから、俺の傷は相当根深い。

「吐きたくて吐いてるんじゃないんですよ、俺だって…」

吐いてるとき、本当、めちゃくちゃ辛いからな。

何で自分こんな風になっちゃうんだろう…やっぱりポンコツだなー…と思うと。

自己嫌悪で死にそうになる。

自分が嫌い過ぎて嫌になる。

「…なぁ、ルトリア。悪いことは言わない」

「はい?」

「…病院行こう。エインリー先生のところに」

「…」

…そうだね。

ルクシーはそう言うよね。

俺も…その方が良いんじゃないかなと思う。

背負っているものが何もなかったら、俺だってそうしたよ。

でも。

「…無理ですよ。今は俺達は…そこそこ名の知れた有名人なんですから」

「…」

今の俺は、ただのポンコツびっこのルトリアじゃない。

これでも一応、『frontier』の一員なのだ。

「俺が病気になんかなったら、精神科にかかってることを知られたら…俺達おしまいですよ」

何言われるか分かったものじゃない。

足がポンコツなことだって、隠したくて仕方ないのに。

その上中身までポンコツだってことが知られたら、『frontier』はどうなる?

俺だけの問題じゃ済まないんだぞ。

病院なんて、絶対行けない。

「だから、病院には行きません。大丈夫ですよ。少々痩せたくらいで…どうにもなる訳…」

「…お前、本当ふざけるなよ」

「…え?」

その日、その瞬間。

ルクシーは、観測史上最高レベルに怒っていた。

俺は、こんなに怒りに震えるルクシーを見たことがなかった。

こんなに怒ってる人を見たのも初めてだった。

我ながら相当肝が据わってる人間だとは思っていたが、今日のルクシーは、俺でも怯えるくらいに怖かった。