Music of Frontier

「…」

「…」

「…お前は、アホか」

「…」

…まぁ、そう言われるよなぁ。

「yourtubeのコメント欄なんて、お前…いくらでも無責任なこと書き放題なんだぞ?トンネルの落書きみたいなもんだぞ?そんなものを、お前は本気にしてるのか?」

…トンネルの落書きは、ちょっと言い過ぎな気もするけど。

でも、ルクシーの言いたいことは分かる。

匿名掲示板で「お前馬鹿だな」と言われて、それを本気にするようなもの。

アホらしい。ルクシーからすれば、そう思うだろう。

俺だって馬鹿馬鹿しいと思うよ。

だけど、馬鹿馬鹿しいと思いながらも…何か食べようとする度に、それが頭に浮かぶんだよ。

「だって…一人だけが言ってるんじゃないんですよ。他にも同意してる人がいて…」

「同意って…。それだって無責任な同意じゃないか。本当はそんなこと思ってなくても、面白半分に頷いてるだけだろう?アンチコメント送ってくる奴なんて、いくらでもいる。お前はそれをいちいち本気にするのか」

「…自分でも馬鹿馬鹿しいことくらい分かってますよ」

でも、その馬鹿馬鹿しいことが、いちいち頭をちらつく俺の身にもなってくれ。

そりゃ食べられなくもなるよ。一度気になってしまうと、やっぱり痩せた方が良いかなと思うよ。

「大体俺は…ルクシーやミヤノと比べて、ずっと劣ってるんですから…」

「…あのなぁ」

あ、これルクシー怒らせた奴だ。

と、思ったけどもう時既に遅し。

「前々からずっと思ってたが!お前のその、自分の外見を自虐するのは、何かの罰ゲームなのか?それとも嫌味か?『frontier』の中でお前が一番人気なんだってちゃんと分かってるのか?」

「…俺が一番人気はないですよ…」

「何がないんだよ?Twittersのフォロワー数だってお前が一番多いんだぞ?ファンレターだって一番多くもらってるだろ。握手会だってお前が一番長い列だっただろ。それら全部なかったことにする気か?」

…それは…。

「お前はな、自分で思ってるよりずっと顔が良いんだよ。俺達が羨ましくなるくらいにはな。だから、もう自分の外見をコンプレックスにするのはやめろ」

「…」

…そんなこと、言われても。

不眠を訴えてる人間に、「難しいこと考えるな。寝ろ」と言ってるようなもの。

それが出来るなら、何の苦労もしない。

「…俺も、何となくルクシーが言ってることは理解してるんですよ」

多分自分が思ってるよりは、皆俺のこと応援してくれてるんだなと思う。

でも、どうしても納得が出来ない。

帝国騎士官学校をクビにされたそのときから…俺は、自分が劣った人間だと思い込むようになってしまったのだ。