Music of Frontier

きっかけと言われて…思い当たるのは、先日の件だ。

あの日…ルトリアは、アルティシア女王の記念式典パレードの中継を、テレビで観てしまった。

あんなものをルトリアに見せてしまったことを、俺は酷く後悔していた。

正直なところ、俺はすっかり警戒を緩めてしまっていたのだ。

ルトリアはもう大丈夫だろうと。過去のことも忘れて、前を向いて生きているのだからと。

でも、そんなことはなかった。

当然だ。忘れようとしたって、忘れられるものではない。

あんなものをルトリアに見せてはいけなかったのだ。俺が、もっと気を付けるべきだったのだ…。

俺が不甲斐ないばかりに。注意が足りていなかったばかりに…ルトリアに、辛い思いをさせてしまった。

みすみすあんなものを見せて、ルトリアの過去のトラウマを甦らせてしまった。

彼に申し訳なくてならなかった。

苦しそうな顔をして膝をつくルトリアの姿を思い出すと、あまりの不甲斐なさに自分を殴りたくなるほどだ。

ルトリアが今、あんな風になってしまっているのは…多分、あれが原因だろう。

そうとしか思えない。

あの件がきっかけで…恐らく、ルトリアの中で、悪い方のスイッチが入ってしまった。

簡単には戻せまい。

入院したときだって…二年以上にも渡って、何とか回復したのだ。

一度悪い方のスイッチが入ってしまったら、それを引き戻すのは容易ではない…。