Music of Frontier

「で…あれだよな。問題は…。ルトリーヌ激痩せ現象についてだよな?」

「激痩せ…ってほどではないかもしれないが、まぁ…痩せたよな。明らかに」

「元々痩せてたのに、最近はやつれてるものね」

そう。やつれてる。

あいつ、ダイエットするのは良いが、元々痩せてる上にダイエットするもんだから、痩せてるを通り越してやつれてる。

あれは、病的だ。

「いきなりダイエット始めやがって、何考えてるんだろうな?ルトリーヌの奴」

「そもそもダイエットしなきゃならないほど太ってないだろ、元々…」

その通り。

ただでさえあいつは、痩せるどころか太れ、と言われていたのに。

何でダイエットなんか始めてるんだ。

「でも、皆でご飯行ったときは普通に食べてるよな?」

「あぁ、そうなんだよ。だから…こう、いまいち『ダイエットしてるだろ』とも言えなくて」

そう。そこがネックなのだ。

俺達の前では、普通に食べている…ように見えるのだ。

それなのに、何であんなに痩せるんだ?

「エル達の前では食べるけど、家では何も食べてないのかね?」

「吐いてるんじゃない?拒食症だよ、多分」

「!」

物凄く、さらっと。

風邪でも引いたんじゃない?みたいな口調で。

ベーシュは、とんでもないことを口にした。

「え…。え、そんなまさか…」

「だって、そうじゃなきゃあんな短期間に痩せないでしょ。元々食の細い人ではあったけど、あれは病的だよ」

「…ベーシュも、そう思うか」

実は…俺も、そうじゃないかなと思っていたのだ。

認めたくないから、目を逸らしていただけで。

「きょ、拒食症って…。それヤバいんじゃね?食べても食べても吐いちゃうんだよね?」

「そうだね」

「そんな呑気して良いのか!?何でルトリーヌがそんなことになっちゃうんだよ?」

「…」

…それが分かったら、苦労しない、って奴だ。

俺にも詳しいことは分からない。

でも…気づいていたのだ。多分、そうなんだろうって。

「確か…ダイエットがきっかけでなるんだよな?」

「あぁ…」

「何でルトリアがダイエットなんて…。確かにルックスが俺達の売りではあるし、ルトリアは自分の見た目にコンプレックスを持っていたけど…」

…ちょっと鬱陶しいくらい、自分の顔をディスってるよな。あいつ。

ボーカルという、一番目立つポジションでもあるし…。

それに、全国ツアーを控えてもいる。

だから、ちょっとダイエットでもしようか、と思う気持ちは…分からないこともない。

ミヤノの言うように、あいつの外見へのコンプレックスは並々ならぬものがあるしな。

でも、だからって…。

「元々痩せてる癖に、何でダイエットなんて思い付いたんだろう。誰かに何か言われたのかな?それとも…何か、食べられなくなるきっかけでもあったのかな」

「…」

…ベーシュ、さっきからお前は、鋭いことを言う。

俺が考えている不吉なことを、彼女は容赦なく言葉にしてきた。