Music of Frontier

…その日、俺達は帝都にあるとあるスタジオで、撮影の仕事があった。

というのも、とある化粧品ブランドが、今度発売する新しい化粧品のキャンペーンモデルに、『frontier』を使いたいと申し出てきたのである。

その化粧品ブランドは主に若者向けの商品を多く発売しており、今若者に人気の『frontier』をキャンペーンモデルとして使えば、販売促進に繋がると考えたのだろう。

それに…自分で言うのは気が進まないが、俺達はそこそこルックスでも売れているから。

その為、俺達は今日こうして、販売広告の為の撮影をしに来た…訳だが。

大変名誉なお仕事をもらったというのに、俺は心ここにあらずの状態だった。

「はい、それじゃ次、ルトリアさんお願いします」

「はーい」

カメラマンに呼ばれ、ルトリアは席を立った。

…その横顔を見て、俺はやはり、と確信した。

俺が見間違えるはずがない。

「…」

ルトリアが去り、四人で残された控え室。

俺は、無意識のうちに相当深刻な顔をしていたのだろう。

ミヤノが、声をかけてきた。

「…大丈夫か?ルクシー。難しい顔して…」

「え…そうか?」

「化粧品のキャンペーンモデルなんてしたくなかったの?」

きょとん、と首を傾げるベーシュ。

それにしても、ベーシュ、お前。

その化粧品つけたら、本当に美人だな。お前だけで良かったんじゃないか、キャンペーンモデル。

それはともかく。

「別にそういう訳じゃないよ。大丈夫」

「あれだろ、ルクシーヌは。ルトリーヌが心配なんだろ?」

「…」

…心配なんだろ、って。

そりゃ心配ではあるけど…。

「別に…」

「嘘つけおめー。ルトリーヌが心配だ!って顔に書いてあるぞ」

「まぁ…最近のルトリアは、明らかに様子がおかしいもんな。ルクシーも、当然気づくだろう」

…え。

お前ら、一体何を。

「エル達が気づいてないとでも思ったか?そりゃ甘いぞ」

「俺達だって、もうそこそこ長い付き合いになってきたんだからな」

「うん。ルトリア最近、痩せたものね」

「…」

…お前達。

気づいているのは自分だけだと思っていたが…そんなことはなかった。

皆、とっくに気づいていたのだ。

「だから、そんなに一人で難しい顔するなよ。俺達にも相談してくれ。仲間だろ?」

「…ごめん。その通りだな…」

自分だけで何とかしようなんて…おこがましかったようだな。

俺が思ってるよりずっと、皆、ルトリアのことを気にかけてくれていたのだ。