Music of Frontier

姉は何と言うだろうか、別に何を言われても構わない…と思っていたが。

いざ姉の顔を見ると、何と言われるのか怖くもなった。

カンニング疑惑がかけられてから、両親からの手紙は散々受け取ったけれど…。姉は全く連絡してこなかった。

俺も何も言わなかった。

…姉は険しい顔つきで、まず俺にこう尋ねた。

「…話は、母上から聞いたが…。本当なのか?」

…カンニング働いたってのは本当なのか、と。

もう何度も、死ぬほど言ったことだけど。

「…嘘ですよ。言い掛かりです。俺は何にも…悪いことなんてしてません」

それなのに、誰も信じてくれなくて困ってるんだよ。

姉はどうだろう?俺の言うことを信じてくれるのだろうか。

すると姉は、それを聞いて表情を和らげた。

「そうか…。何故そんなことになったのかは知らないが、やはり言い掛かりか。本当だな?嘘をついてるんじゃないんだな?」

「嘘なんかついてませんよ…」

そんな、念押ししなくても。

何で俺が、そんなしょうもないことをしなければならないんだ。

「まぁ…お前の地頭の良さを考えたら、カンニングなんてする必要はないよな…」

「…」

俺もそう思うんだけど、でも信じてくれないんだよ。なかなか。

皆俺のこと嫌いなんだろうか。

「分かった。お前を信用する。母上と父上には、私から言っておく」

「…どうも」

「今回のことはもう何も言わない。お前も、あまり思わせ振りな態度を取るなよ。何を言われても堂々と構えていれば良い」

「…」

思わせ振りな態度…俺、取ったっけ?

俺が思わせ振りなことしなければ、こんなことなはならなかった?

本当に?

「お前ほど優秀だと、色々やっかまれたり突っ掛かられたりもするだろうが…。相手にするなよ。相手にすると余計向こうは調子に乗るからな」

「…そうですね」

最近ルームメイトの先輩達がえらく調子に乗っているのは、俺が彼らを相手にしているからなのだろうか。

相手にした覚えはないんだけどな。

相手にしようが無視しようが、関係なしに色々やられてきたんだから。

「お前に嫉妬する奴らのことなんて気にせず、自分なりに頑張れば良いんだ。分かったか?」

「はい」

姉の助言は、嬉しいもののはずだった。

何せ、姉は俺のことを信じてくれた。

両親やクラスメイトみたいに、一方的に俺が悪いと決めつけたりはしなかった。

それだけでも、充分喜ばしいことだった。

さすが、幼い頃から俺のことをよく面倒見てくれていた姉は、両親やクラスメイトとは違う。

だから喜ぶべきだった。姉だけでも信じてくれている、と思えば元気が出るはずだった。

それなのに、どうしてだろう。

姉はそれ以上俺には何も言わず、何事もなかったようにいつも通り接してくれた。

けれど俺の心には、ぽっかりと穴が開いたままだった。

ちっとも嬉しいと思わないし、慰められもしない。これで問題が解決したとも思わない。

実際、何も解決していないのだから。

姉でさえ俺を慰められないのなら、もうこの世に俺を慰められる人なんていないんじゃないか。

そう思っていたのは、その日の翌日、親友に再会するまでのことだった。