Music of Frontier

「ぶふーっ!」

俺は、口に入れたばかりのジュースを、マーライオンのごとく勢い良く吐き出した。

汚いと言われそうだが、とてもじゃないが飲み込めなかった。

あまりにも…酸っぱくて。

「はぁっ!?ちょ、何吐き出してるんだよ!」

「すっ…すっぱ…!ベーシュさん、これすっ…。げほっ、げほっ…」

唾液が。口の中で今、唾液が大量生産されてる。

唇がヒリヒリする酸っぱさ。

何だこれ。オレンジジュースだと思ってたら全く違うものだった。

「ったくおめー、大袈裟な奴だな~。ちょっと酸っぱいくらいで…」

やれやれ、と呆れるエルーシア。

違うんだよ。ちょっと酸っぱいくらいじゃないんだよ。

「いや、ちょっとじゃないんですって。舐めてみてください」

「あん?んじゃ舐めさせてみろ。この程度リットルで飲め…」

タンブラーに指を軽くつけて、ぺろっ、と舐めるエルーシア。

すると。

「ぶはぁっ!すっぺぇぇ!」

ほら。

言ったでしょ?酸っぱいって。

「何これ!?レモン?生レモンの絞り汁!?」

「そんなに酸っぱいのか?どれ…」

軽く舐めてみるミヤノ。

すると彼も、目を白黒させていた。

やっぱり酸っぱいみたいだ。

「これ…。何を入れたんだ?色んな柑橘類の味がするけど…」

ルクシーも少し舐めてみて、酸っぱさを堪えるように唇を噛みながら、そう尋ねた。

ちょっと酸っぱい、なんてレベルじゃない。

酸で溶けそうなくらい酸っぱい。

もしかしてこれは、ベーシュさんから俺への嫌がらせかではないのかと思うくらい。

昨日仕事をすっぽかしたことに怒って、これでも飲んどけ、そして反省しろ、というベーシュさんからの戒めなのだろうか。

するとベーシュさんは、あっけらかんとして、

「鋭いね、ルクシー。このジュースはね、レモンと、オレンジと、スダチと、カボスと、ユズと、ライムと、グレープフルーツと、レモンを搾って、ほんの僅かなハチミツを垂らした特製ジュースなの」

柑橘類の同窓会みたいなジュースだな。

しかもレモンだけ二回言ったんだけど。追いレモンしました?ベーシュさん。