Music of Frontier

我が家にはテレビがない。

新聞も取っていないから、俺は知らなかった。

今日、女王陛下の即位五周年式典だったのか。

前の女王が失態を犯して、妹であるアルティシア様が女王を継いで、もう五年。

当時は、色々な王家のスキャンダルが明らかにされて、随分と世間を騒がせていたが…。

最近では、もうすっかり落ち着いた。

そして、アルティシア様が即位して…もう五年がたった。

早かったような、遅かったような…。

…と、まだここまでは良かった。

テレビに映っていたのは、女王であるアルティシア様の姿だけだったから。

でも。

「お、見て。帝都の大通りで帝国騎士団のパレードだって」

「今年は随分派手にやるんだろう?五周年だから」

「見に行けば良かったかな?お仕事あるから行けないけど…」

「いやぁ、人が多過ぎて見に行けないって。テレビ中継で充分だよ」

中継が切り替わり、大通りで行われているという帝国騎士団のパレードの模様が映し出された。

帝国騎士団の白い制服を見た瞬間。

どくん、と心臓が鳴る音が聞こえた気がした。

思わず目を逸らそうとして、でも俺の目は、持ち主の意思に反して…テレビ画面を見つめたまま、動いてくれなかった。

見つけてしまったから。

パレードに参加する大勢の帝国騎士の、その中に。

見知った顔を。

あれは。






「…イーリア…」

そう、彼は俺に…不正行為疑惑を吹っ掛けた、張本人だった。