Music of Frontier

その日の翌日は、帝都から少し離れた場所にある野外ライブ会場で、ライブを行った。

そこで開催されていたとあるイベントの、ゲストとして呼ばれたのだ。

ライブそのものは楽しいし、最近ではもうあまりライブ前に緊張することもなくなった。

平常心でライブに臨めるようになってきた。良い傾向だ。

しかし、忙しいことに変わりはない。

ライブのある日は、移動や準備や最中打ち合わせやら、朝からやることが山積みである。

そうすると、忙しくて何も食べられないということは全く珍しくない。




「ルトリア、お前昼何か食べたか?」

「ふぁい?」

その日も、俺達は朝から超忙しかった。

ある程度のことはイベントの主催者側がお膳立てしてくれているし、ユーリアナさん達を始めとしたマネージャーさん達が準備してくれているのだけど。

俺達も、ただのんびりと待っていれば良い訳ではない。

と言うか、俺達も負けず劣らず忙しかった。

ルクシーに言われるまで、自分がお昼を全く口にしていないことにも気づいていなかった。

「あ…そういえば食べてないですね」

今日食べたものと言えば、朝、市販のゼリー飲料を一つ、啜ったくらいである。

あれ良いよね。すぐ食べられて。

素パスタだと、茹でる作業がどうしても必要になるから。

まぁ、いずれにしても朝からパスタは食べないけど。

「今ユーリアナがコンビニでおにぎり買ってきてくれたから、お前も食べろ。俺達もさっきもらった」

「あ…そうなんですか」

おにぎりか。おにぎり…食べたいのは山々なのだが。

ちらりと時計を見る。本番まで残り30分を切っている。

この状況でおにぎり…なんて、呑気が過ぎるよなぁ。

「俺は後にします。今食べると声の調子悪くなりそうなので」

下手に食べ物を口に入れちゃうと、唾液が出て、歌ってる最中にそれが喉に絡んでしまう可能性がある。

本番前に食事はご法度だ。

「今日のライブは30分程度ですし、気合いで乗りきりますよ」

「乗りきるって…。それで大丈夫か?」

「平気ですって」

二時間もののライブでもなし、たかが30分くらい、何でもない。

ライブが無事終わったら、有り難く食べよう。




…と、思っていたのだが。