Music of Frontier

『frontier』ルティス帝国五都市ライブツアー。

字面だけ見ると、まるで嘘のような出来事だが。

これが、嘘ではないのである。

全部現実。これから、本当になるのだ。

そして、ライブツアーと平行して、セカンドアルバムの作成も正式に決定した。

これからどんどん忙しくなりますよ!と、ユーリアナさんにも脅された。

ライブツアーの準備やセカンドアルバム作成のお仕事とは別に、ほとんど週末ごとに地方の野外ライブに呼ばれたり、yourtubeでのライブ配信も行っていた。

そりゃあ、忙しいのは当然である。

その日も、俺が帰宅したのは日付が変わる少し前だった。






「…はぁ…ちゅかれた…」

情けない声を出して部屋に入り、鞄をぺっ、と放り投げる。

眠い。とても眠い。

家に帰ってくると、途端に眠い。

緊張の糸が切れるんだろうね。

それに俺は、元々夜型じゃないのだ。

夜は早く寝て、朝は遅く起きる。とっても健康な睡眠のリズムを維持している俺にとっては、大変辛い。

正直もうこのままベッドに倒れ込みたいくらいだ。

でも、そうは行かない。

最低でも服を脱いで、シャワーを浴びてから寝ないと。

「う~…」

俺はのろのろと這いずるようにして、バスルームに向かった。

こんなとき、家が小さいと良いよな。

バスルームまでの距離が近い。

これがもし実家のマグノリア家だったら、お風呂までの距離が長過ぎて心が折れていたはずだ。

半分寝ながらバスルームに行ったせいで、下着着たまま入るところだった。

すんでのところで「あれ?まだ何か着てる」と気づき、事なきを得たが。

お風呂から上がる頃には、もう頭は寝ていた。

身体がかろうじて起きてる感じ。

最低限のものだけを身に付け、俺はそのまますーっとベッドに入った。

もう限界です。

そういや晩御飯食べてないけど、もう良いや。

食欲より、今抗えないのは睡眠欲です。

人間、眠さがマックスになると、食欲を忘れる生き物なのではないだろうか。

俺はそんなことを考えながら、食欲も忘れ、心地よいお布団の中で深い眠りに就いた。