Music of Frontier

「ルトリア先生、これまで、本当にありがとうございました」

「志望校に受かったのは嬉しいけど…。ルトリア先生に会えなくなるのは寂しいなぁ」

などと彼女達は、嬉しいことを言ってくれた。

ちょ、やめて。俺そういうこと言われると泣きそうになるから。

そう、今日は俺が勤める予備校の、修了式の日。

同時に、お別れ会の日である。

彼女達は、皆今日ここを巣立っていくのだ。

俺がアシスファルト語を受け持った生徒達は、無事、全員が志望校に合格した。

自分の指導の賜物、と自惚れるつもりはない。

俺は、彼女達にちょっと力を貸しただけ。

あとは全て、本人達の頑張りだ。

だから、皆胸を張って、ここを卒業していって欲しい。

そして。

「先生、ずっとここにいてくれれば良いのに…。そうしたら、放課後にでも会いに来られるのになぁ…」

「そうですよ。先生の授業、本当に評判良かったんですから。このままここにいればきっと、巷で有名なカリスマ予備校講師として名を馳せたでしょうに」

「あはは…」

なんか、一時期流行ったよね、そういうの。

教えることは楽しいし、もし本業の方をやってなかったら、カリスマ予備校講師を目指しても良かったのだが…。

「でも、今やルトリア先生は大人気グループ『frontier』のボーカルとして有名なんですから、今更カリスマ予備校講師になる必要もないですよね」

「そんな…有名ってほどじゃないですよ」

「謙遜しないでくださいって。予備校やめて、音楽活動一本でやっていくんでしょう?充分有名人ですよ」

そう。今日は生徒達にとって最後の登校日…であるが。

同時に、俺の教師としての卒業式でもあるのだ。