Music of Frontier

気になるのはイーリアだった。

イーリアは、試験明けから一度として俺と口を利いてくれなかった。

エミスキーやラトベル以上に、露骨に俺を避けていた。

しかも…何処か後ろめたそうな顔をして。

俺はその視線が、どうにも気になった。

一度…イーリアとちゃんと話さなければならないと思った。

…俺の予想が正しければ、恐らく。





「…あなたですよね。俺がカンニングしたって言い触らしたの」

「…!」

俺はその日、わざわざイーリアの部屋を訪ねて、彼に詰め寄った。

イーリアの顔は、図星を突かれたときのそれだった。

…やっぱり、そうだよな。

だって露骨過ぎるもん。

「何で、そんなことしたんですか?」

「俺は…!俺が言い触らしたんじゃない!言い触らしたのはお前のところの先輩だ」

「じゃ、あなたは何をしたんですか」

「俺は…ただ、お前の先輩に聞かれたから…答えただけで…」

「…」

あ、そう。

やっぱりそうなのか。

俺がカンニングペーパー作ってるとか、試験直前に焦ってたとか、そんなことは先輩は知り得ない。

そのことを知ってるのは、同じクラスの人間だけ。

「…何でそんなこと言ったんですか?俺のこと貶めて楽しかったですか」

「そういう訳じゃ…!まさか、あんな風に言い触らすとは思わなかったんだ」

「…そうですか」

軽い気持ちだったんだろうね。多分。

「前日寝過ごしたのに、学年トップの成績なんて取って…それが妬ましかっただけなんだ。俺の成績が振るわなくて…。余計に苛立ってて…それで…」

「…そうですか。…もう良いですよ」

よく話してくれたよ。それで充分だ。

結局のところ…。友達だと思ってたのは俺だけだったってことなんだね。

それだけだ。

「ごめん。こんなことになるなんて思わなくて…」

「…もう良いですって。謝ってもらっても困りますから」

もう済んだことだ。

散々言い触らされた後なんだから、今頃謝ってもらってもどうしようもない。

それに、教官に言いつけたのはイーリアじゃなくて、うちのアホな先輩達なんだから。

イーリアを責めるのはお門違いというものだ。

「…今まで、どうもありがとうございました」

「ルトリア…!俺は…」

俺はそれ以上聞かず、イーリアを置き去りにして立ち去った。

疑問は解決したから、それで良い。